soundwing-あの素晴らしい駄文以下のなにか

関西(大阪)のライブレポートを中心に更新。昔はフリーゲームや同人音楽のレビューをしてました。

2011/05/17 芳垣安洋 SOLO LIVE @ ジャズ喫茶 Corner Pocket

先週末のROVOライブでもらったチラシに入ってた「芳垣安洋 SOLO LIVE」のペラ紙。この一枚に惹き寄せられてROVOのドラム・芳垣さんのソロライブに行ってまいりましたー。


場所は大学時代に芳垣さんがお世話になったジャズカフェだそうで20席ほどの小さな場所です。予約せずに当日料金狙いで向かったらラスト一席。危なかった〜。5M先にはドラムがある。こんな至近距離で見れるなんて!
HPで今回のライブのPR文(名文です)を書いた田中啓文の姿もあり。他の有名人もいたのかも?
メイン客は地元学生のジャズドラマーの方々。
仕事帰りでスーツの自分は若干アウェーでしたが、非常に良い雰囲気のお店で居心地はすこぶる良い。特におばさんが良い人オーラ出まくりで和んだ。


スタートの時間になっても予約人で到着してない人がいると待ってくれるおばさん&芳垣さん。良い人だ〜。
その間にドラムをチェックするとセット自体はめっちゃシンプルにスネア、バスドラ、タム×1、フロア、ライド、クラッシュ。ただミニシンバルやギロなど小物がイス周りに散乱してました。
今回のライブは何も考えずに色々持ち込んで、思いついたように音を鳴らそうという方向らしいです。


ちょっと遅れてスタートしたソロライブ。
最初は小さいシンバルでスネアをこすりノイズを作り出し、そこにタブラのように指でスネアを叩く。徐々に膝、フロアと叩く範囲を広げる。膝をたたき始めたとき「ドラムソロ=スティックでドラムセットを叩く」という自分の中の狭いドラムソロ概念が崩されたのを感じました。


ゆっくりと一定リズムを刻んでいたハイハットが徐々にリズミカルになってグルーヴが生まれてくる。
先っぽがゴムの小さな棒で「トトンっ!トトンっ!」と軽快なリズムを刻む。そこに腕一本ぐらいの大きさの銅の飾り(?)が登場。それを肩からかけてドラムセットと組み合わせて叩く。一気に熱気溢れるトライバルなビートに。口からは祝詞のような掛け声を発し、ドラムも身体に付けた飾りも一緒くたに叩く姿はまるでアフリカン。これはORQUESTRA NUDGE! NUDGE!に通じる音だ。興奮度がどんどんと上昇!


トライバルからインプロジャズ調のストレートなドラムワークへ。ストレートといってもテクニックが半端無いのですごい迫力。「すげぇ…」がデフォです。
お次はミニシンバルをタムやスネアに置いて叩く。そこそこよく見る手法ではありますが、スティック捌きが速すぎて「ズギャギャギャっ!」と聴いたことのない音を生み出していました。快感!
他にもスネアにバラバラに鉄琴のピースを置いて、鉄琴用の小さなスティックで叩いてミニマルなフレーズを紡ぐ、そのスティックでスネアの端を叩く(棒が細いのでグワングワンとしなってテルミンみたいな音がしてた。スティックは叩くだけじゃなくしならせる使い方もあるのかと驚き)など長年の感性とインスピレーションから生まれる音/リズムの数々に「おあっ」となりっぱなし。ドラム/パーカス・ソロってここまで広いものなんだ!


盛り上がったスネアワークで一度締め。40分ほどで第一部終了。10分ほどの休憩。この間に芳垣さんとちょこっとだけお話できました♪


第ニ部。
バイオリンの弦でシンバルを「弾く」。現代音楽のコンサートで鉄琴を弦で弾くのは見たことがあったけどシンバルは初めて。すごく良い音がする。しかも角度(?)によって色鮮やかな音が奏でられる。ライドだとまた違った音で面白い。音に惹きこまれたなぁ。なんだか弦だけが欲しくなりましたw
そのあとは小物の使用頻度は少なめ、基本的にスティックでのドラムだったはず。
時に南国風のキックリズムでノリノリに、時にロックに激しく、もちろんジャズゆずりの強烈なスネアヒットは次々と決められる。そのセンスの幅と深さは圧巻の一言。とにかく音がむちゃくちゃ気持ちいいんですよね。
最後はブラシでスネアをかき回して静かに終了。


少人数でも起こるアンコール。ちょこっと悩んだ顔をしたけどすぐに答えてくれた!ドラムの前に座ると「何も思いつかんなぁ」の一言。アンコールをすること自体で悩んでたというよりアイディアが降ってくるのを待ってた感じ。


しばらく悩んで「共演者」としてメトロノームを登場させることに。
チェーンをジャラジャラいわしたり、仏壇の鈴みたいのを鳴らしたり、ガムテープをスネアに貼って剥がしたり(!)と面白い音をいれながら、ほぼメトロノーム無視の怒涛のドラミング。ただ合間合間の音の途切れで「カチッカチッ」と鳴る「共演者」はイイ味だしてた。最後は汗を浮かばせながらの強烈なドラムミング。汗「をかくつもりは無かったのに」と言ってたけど、それだけ熱くなってくれて嬉しいです!


一ライブまるごと、完全一人だけでのドラムソロってのは長いキャリアでも数回しかやったことないらしい。レアなモノが見れた!そんなこと抜きでも素晴らしいライブを聴けた。
絶対的な技術に裏打ちされた想像力豊かなドラムソロ。SEなどは一切使わずの正真正銘のドラム/パーカスソロなのに、まったくダレることなく聴けました。


5M先、腕を少し伸ばせばスティックに殴られる至近距離でこんな素晴らしいソロが見れた20人の1人になれたことに感謝。


芳垣安洋ROVOから入って、アルタード・ステイツやOrquesta Nudge!Nudge!など他の物にも少しづつ触れて好きになっていたここ最近。そして今回のソロを見てますます好きになった。


アルタード・ステイツではロック、Orquesta Nudge!Nudge!ではトライバル/パーカスアンサンブル、ROVOでは唯一無二のドラミングとバンドによってスタイルが変わる芳垣さん。本来はどんなドラムがメインなんだろう?
この日お話しているときに、そんな疑問をぶつけてみました。答えは「わからないなぁ。一応ジャズではあるんだけどバンドによって全然変わるからなぁ。」
今日のソロを見てると、この人のドラムは分類する自体がナンセンスなんだろうなと思いました。「芳垣安洋」というリズムそのものでしかない。