soundwing-あの素晴らしい駄文以下のなにか

関西(大阪)のライブレポートを中心に更新。昔はフリーゲームや同人音楽のレビューをしてました。

夏と私と絵空事 / 全裸ネクタイ

音響系のオリジナル・ミニアルバム。4曲入り。


ジャケットになっている「空の絵」にインスパイアを受けてのCDとのことです。
いままでと同じくアンビエントを経由したゆったり&しんみり音楽集。
ただ、いつもより音がくっきりしてる気がします。過去作のように脆すぎて「音」を一音一音を追い求めたくなる繊細さはあまり感じられない。
それゆえ完全にCDの世界に入っていけないところがあるかも。過去作は「弱すぎる音」に能動的に惹きつけらる魅力があったのですが……。
同界隈の同路線では十分すぎるほど抜きん出ている「静」の魅力はある。でも期待度に比べると……うーん。


今作は青々としたジャケに比べて曲が暗い印象があります。その理由はなんだろうと曲を追いながら考えてみる……すると、また違った一面がまた見えてくるかも?

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①風の音をバックにピアノ/エレピが奏でられるヒーリングミュージック。「夏と私」のタイトルにしてはイントロが悲しすぎる気が。今作が辛口なのはこのCDの入り口にあたるフレーズが苦手ってのがあります。中盤からは穏やかで良い雰囲気なのですが、出鼻を挫かれたのを引きずってしまう……。


②旋回するファンのごとく刻まれるリズム。どこか歯車がぴったりハマっていない感じがして精神的に不安を煽られる曲です。一度音が止まってまた戻ってくるのがまたゾクッとくる(kurabesさんがよくやる手法)。前曲に続いてこの曲もちょっぴり怖さが前に出過ぎている?ちなみにタイトルは「そらのしろ」。


③「退廃メトロノウム」と題された音響アンビエント。ここからはいつもの繊細さが出てくる。音一つ一つに神経が集中する息が詰まるような音世界。ちょっとした衝撃ですべてが崩れ去りそうな感覚。後ろで鳴ってる「綺麗なヤカンの音」みたいなのに集中するとあっちの世界に飛んでいきそう。


④「否空船β」は4曲の中でも別格。この曲こそkurabesさんの真骨頂!浸れるアンビエントサウンドで、旋律は直に響く「泣き心」溢れる旋律。
この時点で満足なんですが、聴きどころは最後。主旋律が消えていくと共に、誰かにサインを送るように鳴るか弱い一音。それが徐々にフェードアウトしていき、かなり小さい音になるまで何度も何度も引っ張る。「音」を守ってあげたくなる奇妙な感情が芽生えて目頭が熱くなります。
ちなみにこの曲は全裸ネクタイさんの一作目「ひぐらしイメージCD」に収録されたオリジナル曲「否光船」の再構成曲。最後のサイン音は、元verで曲の最初に鳴る音でひぐらしの世界へと誘う音です。その音が存在を「いまここ」の証明をするかのように鳴り続ける様に胸が締め付けられる!

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一曲一曲のイメージを思い起こすと見えてくるものがある。
青空を漂う大きな雲は見ていて綺麗なんだけど、その大きさに何か恐ろしさを感じることがある。そんな心の情景を切り取ったようにも思えます。最初のイントロのメロディは現実的な悲しみ、そこで「そらのしろ(空の白/城)」を眺めるのをトリガーに精神が大気/環境(アンビエント)へと解放されていくような。


kurabesさんは「空の絵」の後ろにどんな情景を想い描いたのでしょうか?
空のイラストを見て綺麗だと思った。しかしそれを眺めながら作った音楽はよくわかない「空」そして「雲」への神秘性と恐れを感じているようです。


音楽作品としてはいつもより繊細さが無くてどうもパンチが弱いなというところがあるのですが、見方を変えてみると面白い作品なのかも。