soundwing-あの素晴らしい駄文以下のなにか

関西(大阪)のライブレポートを中心に更新。昔はフリーゲームや同人音楽のレビューをしてました。

2012/03/20 闇鍋音楽祭2012 - ソウル・フラワー・ユニオン (guest:向井秀徳)@ 梅田シャングリラ

七尾旅人がゲストだった2011は3.11で沈んだ気持ちを奮い立たせてくれた思い出深いイベント。


まずは奥野さんが挨拶「や、やみなめ音楽祭へようこそ」しょっぱなから噛みまくりで大量のツッコミが入るw


本日のゲストは向井秀徳 from ZAZEN BOYS

向井秀徳

笑顔で登場して椅子に腰を下ろし、最初にやることは焼酎をソーダ割り。
「焼酎はしっかり混ぜんとな…」とブツブツ呟きながらマドラーでかき混ぜて一口。


まずは『water front』。
「ため息を一つもらしながら立っている水際 ここはウォーターフロント」「何かに取り憑かれたように笑い続ける 一晩中」3.11移行はこの曲の意味も変わる、いや変わらざるをえない。数年前まで予想しなかった向井秀徳のやさしい歌声にうっとり。


ナンバガ時代の『Frustration in my blood』。「フラ…フラフラ・ストレー……ション」と人力で言葉を区切る奇妙な技で笑わせながら「個人的にノってきましたっ」と嬉しそうな言葉。今日の向井は気分いいぞ〜。


『サカナ』という曲。ギターをルーパーで重ねまくりの実験的なサウンド。
普通こういう曲は優しいアルペジオを紡ぐもんだけど、zazenの鋭いギターをそのまま重ねてくるもんだからすげー迫力。とがりまくりの音の塔。めちゃくちゃかっこよかったです。
ここらへんからリバーブ(でいいのかな?ヒュンヒュンって音が迫ってくるやつ)を多用。七尾旅人の影響だろうか?少々使いすぎな気も。


次は『カラス』。「まっくろけっけのカラスが電線から落ちていた 区役所に連絡した 二時間後に羽が一枚だけ落ちていた」というシーンを向井節で印象的に届ける。イメージ出来る情景と哀愁極まりないギターがマッチしてて心に響いた


『故郷』。3.11直後のyoutube、「向井秀徳」のイメージの真反対にある柔かい歌声を披露した多くの人を驚きそして感動させたアノ曲です。
動画のアコギとは違い、立った状態でエレキで演奏。まるで自分の気持ちを分厚い音で武装したかのような音の塊。父のような優しさを押し出した3.11の動画とは大きく異なる感情剥き出しの歌でした。脇に用意してたから本当はアコギの予定だったんじゃないかな?何かが向井を突き動かしたんでしょう。
立って演奏したのは先にも後にもこの曲だけでした。


KIMONOSの『YURERU』をセルフカバー。
良いメロディ〜。向井関連で音源になってる曲の中じゃこの曲が一番向井さんの綺麗な声を聴かせてくれてると思う。


数分間ノイジーなギターをかき鳴らしてから『Day of NEKOMACHI』。サビでも轟音ギターをかき鳴らすハードな演奏。


そして『自問自答』早口で繰り出される圧倒的な歌詞。「どこにある どこにある ここにある この脳にある」「ジントニックみたいなシュワシュワな気持ち」と即興の歌/語りも挿し込みながら後半になるにつれ感情が露わになっていく。名曲です。
最後に起立して礼。


焼酎を飲みながら(時にソーダで割りながら)人間味のある佇まいで「歌」を聴かせてくれたソロライブ。
歌とちょっぴりの変態演奏。
昔はZAZEN > ナンバガで「歌ってる向井に興味はない」とかよくいってたんですがギター一本で歌ってる向井秀徳、すごくいいです。



P.S.
ライブが始まる前に焼酎とソーダ水をテーブルに置いていったのはどうみてもZAZENベースの吉田さんだったような……。これだけのために付いてきたんだろうかw

ソウル・フラワー・ユニオン

頼もしすぎる表情でステージに登場したソウル・フラワー・ユニオン。去年末のBIGCATに比べて中川さんの花粉症はマシ?あのときは顔が苦しそうだったもんなぁw


意外にも『ダンスは機会均等』が一曲目。ちょいまったりめのスタート。
かと思ったら3曲目くらいに『歌は自由を目指す』でがっつり盛り上げる。
数曲メドレーで珍しく『BIG APPLE』が入ってたり、早い段階で『荒れ地にて』を披露したり……見るごとにガラっとセトリの内容変えてくるなぁ。さすが活動歴長いだけあってストックが豊富。
演奏はじゃっかん覇気が無い?去年がシチュエーションもありスゴすぎたってのもあるだろうけど……なんか、こう、ぶつかってくるものが弱かった気がします。絶技キーボードを聴かせてくれる奥野さんと相変わらずのスラっとしたスタイルの美保子さんは良かった。


(レコーティングのため!)早めに東京に帰るという向井秀徳がゲストで登場『歌は自由を目指す』のセッションです。レアな向井のアメリカンロックなギター。これがソウル・フラワー・ユニオンのサウンドにあっててすごくカッコよかったです。盛り上がった!めっちゃ笑顔で演奏してたのが良かったなぁ。さすがの向井も中川さんの横に並ぶと若造に見えるのが新鮮だった。


新曲などを織りまぜながら『満月の夕』が特別なMC無しでスタート。でも言葉はなくとも色々な想いを感じます。震災の映像がフラッシュバックしたのやはりこの曲。311、阪神大震災の他に最近亡くなった祖母の映像もアタマに浮かんだ。忘れないって気持ちにさせてくれる大切な曲。
いままでニコニコしていたメンバーもこの曲では軽い気持ちの笑顔は見せませんでした。


前半は弱く感じたバンドの演奏も後半に行くにつれ熱さを増していき、一緒に客も気持ちが音楽と一体化していくのがわかりました。
特にクールな演奏が様になっていた『平和に生きる権利』はこの日のベスト。
小技を大量に入れてくるドラムが本当にすごかった。ものすごく静かなタッチから急に力強く盛り上がったりと魅了されっぱなし。しっかりとドラムが見れる位置にいたのが幸せでした。かなりガッツリと取った間奏もヤバい。奥野さんのキーボード、中川さんのギターに聴き惚れました。


『極東戦線異状なし』で原発廃止のメッセージを明確に訴え、大盛り上がりの『海行かば山行かば踊るかばね』で終了。
アンコールは攻めの曲が残ってて『風の市』。そして「もう酒飲みに行こうと思ったけどこれ忘れとったわ」と応えたダブルアンコールに『神頼みより安上がり』。
当然のごとく盛り上がりまくりで久しぶりにSFUで軽いモッシュ発生。向井効果か?


22時前に終了。前日が23時ぐらいまでやったらしいからその反省?間延びするよりラストに盛り上がる曲やってこれぐらいスパっと終わるほうが好きかも。
MCは漫才のようなノリのが多く、シリアスな話は少なめ。それでも帰り際にはソウル・フラワー募金に協力していこうって気になる。そう感じるのはライブでの佇まいだろうか?中川さんはもちろんだけど、高木さんの笑顔とかもすごく好きなんだよなぁ。



冒頭に書いたように僕にとって闇鍋音楽祭は3.11の悶々とした気持ちから一歩を踏み出させてくれた忘れられないイベント。
去年に比べるとセットリスト、ステージング、客のノリとも思い出のほうが上回ってしまう内容ではあった。けど3.11にしがみつくことなく確かに前に進んでいるバンドのライブを見た後に残ってるのは確かな満足感と「やってやるぞ」って気持ち。
自分の意識の確認のためにもこのイベントには毎年足を運ぶ気がします。