soundwing-あの素晴らしい駄文以下のなにか

関西(大阪)のライブレポートを中心に更新。昔はフリーゲームや同人音楽のレビューをしてました。

2013/06/14 Fernando Kabusacki with 山本精一(Gt)+Yoshitake EXPE(Gt)+西滝太(Key,Synbass)+楯川陽二郎(Dr)+MAYUKo(Synth)+RIE LAMBDOLL(Voice) @ 梅田シャングリラ

2011年の来日(同じくシャングリラでのセッション)で即興ライブの楽しさを教えてくれたカブサッキ。彼のおかげで音楽の新たな一面が見れるようになりました。自分の音楽人生の中でとても重要なポジションのアーティスト。
今回のJAPANツアーが発表された時からワクワクしてました。今回もすごいセッションメンバー!!


シャングリラに到着するとフロアにイスが並べてありました。前の方のそこそこ良い位置をゲット。
まずは山本さん、カブサッキ、CrossbredのMAYUKoさんが登場。山本さん曰く「第一部で3セッション。休憩を挟んで2セッションぐらい」とのこと。休憩以外はノンストップで演奏者が変わっていきます。

第一部

山本精一、カブサッキ、MAYUKo

最初は透き通った音色のアンビエントなセッション。
カブサッキは弾いてるのがわからないほど優しいタッチでギターを弾いてる。音色はとても穏やか。ここまで繊細なギタリストを僕は知りません。ホント聴いてて気持ちいい……。


MAYUKoさんのシンセは二人の有機的なギターに比べて機械が作った音に感じる。このミスマッチは冒険だな、と思いました。上手くいけばセッションに厚みと意外性が出るけど、間違うとセッションの空気を一台で壊す可能性もある。このシンセがライブ全体を通して良くも悪くも刺激剤になってました。

カブサッキ、楯川陽二郎

カブサッキがギターを奏でてる間に山本さんとMAYUKoが退場してBoredomsのドラムス、楯川陽二郎さんがIN。
陽二郎さんのドラムにカブサッキもキレの良いギターで応えて一気にリズミカルに。


なんとなくカブサッキのギターは和風な気がしました。テンテケテンテケテンテケ……と三味線でやりそうな。がんばれゴエモンのBGMでありそうな”なんちゃって和”。日本の音楽の勉強してきた?


カブサッキ、楯川陽二郎、西滝太、YOSHITAKE EXPE

PARAの二人がIN。


陽二郎さんの刻む何拍子かまったくわからないリズムが変態すぎる。
カブサッキはアメリカン・ロックなギター。こういうのもいいなぁ。陽気な雰囲気でノリ良く進行。YOSHITAKEさんが得意のスラップ弾きを加えていきさらにリズミカルになる場面もありましたが、中心は陽二郎さんとカブサッキかな。

カブサッキ、楯川陽二郎、山本精一、RIE LAMBDOLL

PARA二名はあまり見せ場がないまま一度OUT。山本さんとCROSSBREDのRIEさんが登場。


RIEさんはステージの中央に立って声を中心としたパフォーマンス。手には鈴などの金物の小物を持ってました。異国の地の祝詞*1にも聴こえるヴォイスを発し、神聖なモノの依り代、巫女のようにも感じました。


陽二郎さんは前セッションの熱を引き継いでノリの良いリズムを叩き続ける。山本さん、カブサッキとも速いストロークで攻めていって演奏がどんどんと情熱的になっていく。ステージ上でものすごい科学反応が起こっているのがわかります。こっちもどんどん演奏にのめり込んでいく。


終いにはカブサッキが立ち上がって高速ストローク!グワーッとセッションのエネルギーが最高潮まで達したところで第一部終了。演奏の熱量、という点ではここがこの日のピークかな?




個々のメンバーが個性的で素晴らしい演奏を聴かせてくれているんだけど、やはり一番おもしろいのはセッション全体を動かしていくカブサッキのプレイ。全体を完全にコントロールするのでなく「こんなリフはどう?」って感じで展開を提示していく。やってることは裏方なんだけその裏方仕事が一番気になる不思議さ。「次はどんなリフを持ってきてくれるんだろう?」とずっとカブサッキを注目しながら聴いてました。


素晴らしい演奏で笑顔が至るところに咲いてる素晴らしい休憩ライムを挟んで第二部へ。

第二部

カブサッキ、山本精一、YOSHITAKE EXPE

第二部はギター3人でスタート。
どうも”3人”がうまく絡まらずに戸惑いながら演奏していた気がします。二人まではうまくいくことがあっても3人で良い演奏が続くってことがなかった気がする。
特にYOSHITAKEさんはどう入っていくか悩んでいたように見えました(表情はクールだったけども)。

全員

最後はフルメンバー。
総勢7人と人数が多いうえ、陽二郎さんが相変わらず変態なリズムを叩くので、数分カブサッキがどう次の展開に導いていくか、入るのに苦労してる時がありました。


そんなこともあり”カブサッキ with 〜”というより”日本人勢のセッション”としての側面が強かったように感じました。
しかしMAYUKoさんのシンセをベースに全体がポジティブに昇天していくパートはかなりの気持ちよさがありました。PARAの ARABESQUEに似た明るい高揚感。特に山本さんのギター良すぎた。メロディアスでわかりやすいギターソロ。他メンバの演奏を背後に携えて飛行している鳳凰のようでした。


演奏がおとなしくなってカブサッキのkaossilatorみたいなので*2鳥の声を再現 → そのまま鳴き止んで終わると思ったら…… → カブサッキのソロがスタート。いままでシャングリラで聴いたことのない奥行きのある音。1人でオーケストラを演奏してるみたいな上品さ。ステージ上の人達も含め「え?なんで一人の演奏者からこんな音が?」 と驚いてました。
今までさんざん7人で熱い演奏をしてきたのに最後の最後で一人で全部かっさらっていった。スゴすぎる……。


ラストの終わり方は衝撃的でしたね。2011年のギターでサックスソロをやった衝撃に近い。*3
PARAの2名は今回はあまり目立たなかったように思います。
陽二郎さんはとにかく変態すぎた。大人しそうな顔してるけどボアダムスのメンバーだけあるわw
CROSSBREDの二人は他のメンバーに比べて即興演奏の経験値は少なかったんじゃないかな、と予測しているのですが*4飛び道具としてバンドにケミストリーを与えていたと思います。


アンコール

カブサッキ ソロ

最後は山本さんがカブサッキに頼み込んでのソロ。山本さん曰く「ソロが最高なのにやりたがらない」だそうな。


紡ぎだされたのは温かみとかわいらしさが同居してるギターの音色。僕はVampire Weekendを連想しました。日本人には出せないであろうポップで上品なフレーズをルーパーでつなげていく。どのフレーズでそれだけで一曲出来上がりそうな素晴らしいモノ。出てくるすべての音が至福でした。
しかし、後半は高速に右手を動かしてノイズな演奏になっていきます。ジャパノイズのような暴力的なノイズではなく砂嵐のようなザーーーっというノイズ。サイレンのような音も聴こえてくる。
私には3.11以降の警告音に感じました。……なんでも結びつけるのは悪い癖でしょうか?でも3.11から一ヶ月も経ってない時期に来日して全国でライブしてくれたカブサッキ。麻痺して忘れかけてる日本人以上にあの時を鮮明に覚えているかもしれない。
とりあえず私には3.11から半年くらいのいままでの常識が崩れていく感覚、もう普通の日は戻ってこないんじゃないかという感情がわずか9分ほどのソロで蘇ってきました。




今回も素晴らしいライブでした!
他の即興演奏から明らかにひとつレベルの高いモノを見せてくれる。


印象に残ってるのは本編最後とアンコールのカブサッキソロです。でもそれは「カブサッキがソロやればいいじゃん」ってもんでもなく、7人のセッションを通してソロがやってくるからこそ最高の体験へと変わるんじゃないかな、と思います。
僕はソロよりセッションが見たい。




↑この日のソロ。名演です。

*1:普通に英語で歌ってたようにも聞こえましたが……微妙なとこ

*2:今回この機材気に入ってたなぁ。よく弄ってた

*3:何を言ってるかわからねーと思うが……本当にギターでサックスの音色を出してたのです。フレーズも完全にサックスのそれ

*4:特にRIEさんは周りを見渡しながら「次どうしよう?」と不安そうにしてることが多かったように見えました