soundwing-あの素晴らしい駄文以下のなにか

関西(大阪)のライブレポートを中心に更新。昔はフリーゲームや同人音楽のレビューをしてました。

2014/09/30 山本精一 イマユラ・サイケデリア @ 難波ベアーズ


山本さんのソロライブ。


前回のレコ発で”14本くらいありとあらゆるギターを演奏する”だとか言ってたので楽しみにしてみました。
いざ会場についてステージを見ると……あら、ギターが3本しかないw
気が変わったのでしょう;
アコギとエレアコとエレキ(黒ストラト
七尾旅人との百人組手でネックの先が折れた黒ストラトは新調したみたい。ステッカーも貼ってないピカピカのギターでした。


客は40人くらい。思ったより少ないな。
ライブがはじまる気配がしたら照明が暗くなる前から席につくわかってるお客さんばかり。

アコースティック・ギター

クラシカルなフレーズが主。


自然の音や動物の鳴き声をバックSEとして流しながらの演奏でした。
ただ雰囲気作りのためにSEを流してるのではなく、ギターフレーズのあとにピッタリのタイミングで鳴き声が入ったりなど意図的なのか偶然なのかアンサンブルのように咬み合ったりしてました。これには驚かされた!


山本さんはミスタッチが多いとこがあります。でもその揺らぎを活用する天才。メタル・ギタリストと対極。ギターって正確性だけじゃ優劣は決まらないんだなぁと改めて感じさせられました。


僕の頭のなかでは、最初は草原のイメージで始まりました。途中に吹雪のような音が聴こえてきて「氷河期?」と思ったてら動物の鳴き声が聴こえてきて氷の世界のなかに動物たちがいっぱい暮らしてるようなよくわからない絵が頭のなかに浮かびます。
弾いてるフレーズの切り替わりが必ずしもSEと同期しておらず、色んな世界がぐちゃぐちゃになったようでカオティックに感じました。


マイクの感度をかなり上げいて小さなスライド音も聴こえてくる。客が咳をしたらコンサートホールのように響いてました。みんな音を出さないように集中して聴いてる。このシチュエーションはキース・ジャレットのコンサートを思い出すな。

エレアコ

こちらもサウンドの雰囲気はアコギと似た感じのセット。
でもギターの音は明らかに違って、もっと”光”とか”風”とか非物理的なモノな感じがしました。
アコギ・セット後半の流れを受け継ぐように速いストロークのコード弾きを主に展開。




終わったあとに無言で退室。第一部終了です。
アンコールを求めてしっかり拍手している人たちが多数いて、アーバンギルドでの事件がトラウマになってるのかな、とか思いました(笑*1



第一部はアコギソロCDの『LIGHTS』に近い印象。
SEとの偶然的(?)アンサンブルなど驚きポイントもありましたが”よくある山本さんの素晴らしいライブかな”ていどの充実感でした。




……しかしこのあとの第二部が恐ろしく素晴らしい演奏となったのです。



エレキギター

エレキ一本で色んなジャンルを横断しました。
いや、ジャンルなんて言葉で片付けられるモノではなくて音楽を創作する源となるスタイル/本能……そんなモノが山本さんの中から湧き出ていました。





60'sロックなギターSEをかけてスタート。合わせてアンビエント的なフレーズを弾いてた……と思ったら突如ギターを真下に寝かせて轟音ノイズ。「あ、これ結構ヤバイぞ」ってな大爆音です。
しばらくノイズが続いたあとにドローン展開。微睡みの世界に手招きされ「ちょっと眠くなってきた…」というところに鋭いカッティングギター。ここからが圧巻!


切れ味抜群のフレーズを弾いててたまりませんでした。めちゃクソかっこいいカッティングをルーパーで反復させはじめたときは「うおぁ!それループさせちゃう?!」ってガチで鳥肌が立ちました!
そのループを基準にロックな弾きまくり。ものスゴい演奏に客全員が圧倒されていくのがわかります。


激しいパートが突如終わって「めざめのバラッド」のような奇妙なフレーズに。切り替わりが急すぎて「この人本当に多重人格なんじゃ」って思いました。
お次はクラシックのカノンのフレーズを運指だけそのままに押さえるフレットを変えたと思われる演奏。不協和音を発生させながらも重ねていくと、頭で考えてたら絶対に辿り着かないカオスなフレーズが出来上がっていきました。
そして戻ってきた大轟音ノイズ。恐ろしいスピードのストロークで一回目のノイズよりもっと音がデカイ!!
ノイズが落ち着くとともに聴こえてくるロックなギターSEに合わせて同じフレーズを弾く。音はPARAで多用する独特の甲高い音。そのままゆっくりと終演へと向かいました




終わった瞬間に心のそこから拍手をしました。すごいモン見ちゃった!


ライブステージでみんなの前で演奏してるはずなのに、奇才が部屋にこもって黙々と音楽を練り上げてるのを目撃した気分。山本さんの底なしのセンスが湧き出てきてある種の恐さすら感じました。幽遊白書の仙水が多重人格とわかったときにブルっときた恐怖に近いものがありました。
聴きながら全身に妙な力が入っちゃって……グラビティ・ゼロを見た時みたいだったな。


怖いと同時にすごく楽しかったです。
次にどんな展開がくるのかワクワクしながら聴く楽しさ。山本さんの活動歴と照らし合わせながら聴くのも面白い。そして、直感的にもカッコイイフレーズが満載!


完全に山本さんの世界に取り込まれました。音楽の世界観とかそういうレベルじゃない。山本精一という人間そのものに触れた感覚。それでいて山本さんをものすごく客観的に見てる気分もある。この感覚は……映画?
山本さんもインタビューでよく「自分を客観的に見てる」といった類の話をしています。その感覚が少しだけわかったかも。

アンコール

エレキパートはご自身でも満足な内容だった様子。饒舌なMCのあとにアンコール。
”弾き語り”ならぬ”語り弾き”でシンプルな曲とのこと。
いやいや、リズム変則的すぎるし、フレーズはなかなか安定しないし……どこがシンプルなんですかー。最後まですごい演奏でした。


今回は色々なスタイルを一度にやったらしい。
PARAも想い出波止場もChaos JockeyもPsychedelic jet setもなんばジャズもCrown of Fuzzy GrooveもLIGHTSも山本精一という人間から出来てるのを見せつけられました。



今まで見てきた数多くのライブのなかで、もっとも山本さんが山本さんたる核の部分に触れられた気がします。
山本精一・音楽活動終了7DAYSみたいのあったら一日は今日みたいなライブになるんじゃなかろうか?そんぐらい大満足でしたー!



ストラトにステッカーは無し。ちょっと寂しい。

*1:詳細はネットで調べればでてくるはず