soundwing-あの素晴らしい駄文以下のなにか

関西(大阪)のライブレポートを中心に更新。昔はフリーゲームや同人音楽のレビューをしてました。

2018/03/17 Geist @ 名村造船所跡地

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日野浩志郎さん(YPY/goat/Bonanzas)によるプロジェクト・Geist。


初日の初演に行ってきました。この回を選んでよかった。
新”体験”ともいえる今回のライブ。
まったく情報が無い状態で見ることができたのが本当によかった。




会場は名村造船所跡地の一室。
暗い会場に入ると椅子がならんでいて演劇ステージのようでした。 


ステージには巨大な黒色ビニール袋(?)が見える。なんだかエイリアンかなにかの卵のよう。BGMには虫の声が聴こえる。


開演時間になるとさらに暗くなり、虫の声にパルス音系のノイズが混ざっていく。さらに電子音、トランペットやサックスの音が物音、楽器、ノイズか明確でないように追加されていく。開場BGMからスムーズにライブに移行しました。


音はサラウンドに聴こえてくる。上・左右……なんと椅子の下からも音がする。音の振動がダイレクトに椅子に伝わってくる。
この音がどこでどのように発せられてるのかわからない不透明性が面白かった。


録音した音なのか、生演奏なのか。
スピーカーが四方にあるのか、演奏者が四方にいるのか。
足元にスピーカーがあるのか、人がいるのか?
ビニール袋の卵のなかで人が演奏しているのか?
暗闇で見えない分、想像力がどんどん湧いてくる。


何が起きてるかわからない緊迫感。でも聴こえている音は確実に気持ちいい。
わからない怖さと音の心地よさ。”危害を加えないポルターガイスト”なんて言葉が思いつく。
音はどんどんと増えていき、音の空間に自分が溶け込んでいく感覚。音だけを楽しむのではなく”Geist”という空間そのものを体験していました。




次第にビニールの卵はしぼんでいく。そこには演者はいなかった。
音が鳴り止むと2階から眩しい光が照らされる。そこに人の姿がうっすら見える。
と思っていると下のセッティングが少し変わっている。円形のオブジェが見える。


こういった視覚/集中する場所のミスディレクションが面白い。
何が起きているか明確に答えがわからないように少しづつ感覚をずらしてくる。
Geistという空間に迷い込んだようにも思えました。


その後、Eli Keszlerさんと山本達久さんのドラムセットが照らされて音の粒子の洪水のようなドラムを響かせたり、2階を歩き回りながら演奏する人たちがいたりといった演出がありました。


中盤までは”なにが起こっているんだろう?”という新体験を心から楽しんでいたけれど、終盤は音的にもギミック的にも動きが少ないように感じて”ん?”ってトコも少なからずはあったかもしれない。個人的に。


今回のライブは自分の中で色んな経験とリンクしました。
・暗闇の演奏 - In the dark (山本精一勝井祐二)
・音の多様性 - YPY
・四方にいる演者 - Jeff Mills with オーケストラ
・暗闇での未知の体験 - ブラックボックス
意味を強要するのではなく、色々な受け取り方のできる場でした。


音楽ライブとしてだけじゃく空間、体験としてめっちゃ面白かったです!


Geistについて詳細を書いてるようで、読んでみると行った人しか結局はわからんくらいのあやふやさで書いたつもり。
行ったひとが”ああ、そうだった”と思ってもらえれば嬉しいです。
やー、ほんとスゴい体験と想像をしたなぁ