soundwing-あの素晴らしい駄文以下のなにか

関西(大阪)のライブレポートを中心に更新。昔はフリーゲームや同人音楽のレビューをしてました。

第4回 同人音楽研究会レポ

土曜日は大阪大学で行われた第4回 同人音楽研究会に参加してきました。参加は第一回に続いて二回目。(第一回のレポはこちら
既に大学は卒業してアカデミックな事からは離れた身分ではありますが、やっぱり興味があるし、幸いにも開催場所が家から非常に近かったので顔を出してきました。


以下、当日の様子を記していきます。
※私が把握できた限りのことなので、詳細については正確でないかもしれません。ご了承ください。

概要

参加人数は発表者を合わせて12人(うち4人は発表/主催側)+途中参加1人。
部屋は一般的に大学のゼミで使われるくらいの小教室。机はスクール形式のレイアウトでした。
入ろうと思えば25人くらい入れそうな教室だったので当初はもう少し多くの参加者を想定していたのかもしれません。


第一回と同じくまずは軽い自己紹介からスタート。
音楽サークルとして活動されている方は2人。大阪在住の人より遠方から来た人の方が多かったのが意外でした。
第二回研究会の発表者、梅田さんの知り合いの方、同人音楽も扱うラジオを運営している方などちょっと特殊な人が多く、完全に一般の同人音楽ファンの方は(自分を除くと)一名だけだったかもしれません。
やはり参加のしにくさがあるのでしょうか。

インターネットのアリス達〜同人ボイスドラマの解釈をめぐって〜

ボイスドラマに焦点を当てた発表。CD媒体よりネット上で公開されているボイドラに関する話が多かった。


まずボイドラの頒布形態や、流行しない理由などを軽く紹介。そして、次に確認出来るだけでも18作ある「不思議の国のアリス」を題材としたボイドラ作品を原作と比べながらその特性を読み解いていくという流れ。


「作品」にしっかり焦点を当て掘り下げて行くのが自分が先行していた社会学にはあまり無いので新鮮でした。
発表はだいぶアカデミックな体裁を成しており、それに呼応するように質疑応答もしっかりと学術的なものに成っていたと思います。ただサンプルをもっと早い段階で聴かせてくれたほうが全体のイメージが掴みやすかったかなと思いました。


M3会場で昔から参加している人と話していると「映像コーナーが音楽のクロスフェードばかりになって寂しいよね。昔はボイドラとかもっとあった気がする」と昔のボイドラ話に展開することが多々ありました。
今回は情報として扱える記録が残っていないことから2005年以降の話が中心でしたが、その前がどういう状態だったのかは興味があります。ラジオドラマ全盛期は2000年初期の「ときメモ1」とかのイメージがありますし。

音楽『同人』としての8bitコミュニティ

音はそこから意味を連想する(例:学校のチャイム)。この意味を共有する人たちを「サウンドの共同体」と呼ぶ。その共同体の中に8bitサウンド(=ノスタルジーを連想)があり、その共同体は「好きを共有する同人」として機能するのではというテーマ。


8bit系のクラブイベントやチップチューンレーベルの紹介が主でした。
あまり「狭義の同人音楽」に触れず、クラブイベントやインディーズを含む話に展開していたかなと思います。


今の同人音楽界隈のチップチューン系は二次創作(最近のゲームの8bitアレンジ、レトロゲーの8bitアレンジ、ニッチに需要?)、オリジナル(多くがJ-CORE、ハードコアテクノ系と結びついてる、マスに需要?)の二つに分類できると思うのですが、ここらへんを一緒くたにして話が進んでしまったのが少々残念な気もします。


しかし、FM”音源”を頒布しているサークルもいる、日本がチップチューンのフィールドとして海外から注目されているなど、面白い話が色々と聴けました。


今回はあまり深いところまで話が行きませんでしたが、8bit音源は:

  • 音源機材を頒布するなどハード関連も扱うサークルがある
  • クラブでは一般的なクラブ以上に「テーマ」を徹底し、サウンドだけでなくレイアウトや使用機材にも凝る
  • 一般人の「ファミコン」レベルとレトロゲーマーの趣向品レベルなど共同体によってイメージがことなる
  • ファミコンというオタク分野のモノが根本にある

など色々な切り口があり、同人音楽で扱うと面白い題材だと思います。

全体として
  • 手探り状態だった第一回に比べると研究会の発表としての形がだいぶ出来上がっていたと想います。ただ、それは今回が「音系同人」から少し離れた点での議論がほとんどで「面倒な部分」にあまり触れなかったからという一面もあるかもしれません。軸になる部分に話が及ぶとブレてしまう箇所もありました。
  • 議論が渦のド真ん中から外れているがゆえ、多くの人が「同人音楽研究会」という名前からそのままイメージからは外れていると感じる可能性は大いにあります。個人的に今回は「同人音楽研究会・外伝」という印象でしたが、はたしてこれが今後の研究会の主流になるかは興味深いところです。
  • 今回も途中から大物が登場。やはり発言に重みがある人が入ってくると俄然話が面白い方向に向かう。興味深い話をいっぱい聞かせていただきました。
  • 親睦会も参加してきました。皆さんこの界隈を変えたいというしっかりした信念を持っている方が集まったのではないでしょうか?音系についてガチで話せる人たちばかりで皆さんだいぶ盛り上がっていたようです。
  • 参加者が少なかったのは、水樹奈々大阪城ホールライブ、TANO*C STRIKE WESTと日付が重なり、更に関西私大の多くが卒業式だったのも要因のひとつかもしれません。


今回も興味深い話が色々と聞けて「もっと話し合ってるのを聴いていたい」と思わせてくれる内容でした。
次回の開催はまだ未定ですが、近日中に論文をまとめた「同人音楽研究 vol2」が出るとのこと。論文以外にも面白いコーナーを予定しているとのことで楽しみです。
最後に、今回もお世話になりました世話役の北島さんと井手口さんに感謝!



P.S.

一般的な同人音楽リスナー、現場で活動しているサークルさんの参加者が少ない点は、M3開催の同日に同じ会場でシンポジウムとでも称してミニ研究会を開くと興味を持ってくれる人が増えるんじゃないかなとか。
議論自体は少人数で行い、別のモニタに映したのをみんなが見るって方式が話はまとまりやすいかな?
Ustreaemを使ってtwitterで外部の意見を投げ入れるってのもありかもとか妄想。


はたして不用意に参加人数を増やすのが良いことなのかはわかりませんが〜。