soundwing-あの素晴らしい駄文以下のなにか

関西(大阪)のライブレポートを中心に更新。昔はフリーゲームや同人音楽のレビューをしてました。

虹色ジェットコースター / ピコミール

ポップスの魅力が詰まった良盤・小さなせかいを生み出したNanosizeMirのテクノサイドであるピコミールのオリジナルフルアルバム。

HPではテクノサイドとなっておりますがデジタルサウンドだけに捕らわれることなく、ピアノバラードあり、電波曲あり、NanosizeMirの流れを組むロック曲もあり、と幅広い音が詰まったごった煮アルバムです。


ありとあらゆるジャンルを吸収してポップスに高次元で消化する才能は遺憾なく発揮されています。90'sJ-POPの空気を持つどこか懐かしいメロディはすんなりと耳に飛び込んできて、アレンジも細部まで手が込んである。


謡曲色が強いのはNanosizeMirと同じ。
しかし、NanosizeMirは自然/人間の大きさ/優しさを感じさせる曲調に田舎娘的な素朴さと力強さにあふれた水谷瑠奈さんの歌声をうまく溶かし合わせたサウンドテクスチャーだったため詰め込みまくった内容でも疲れませんでした。
それに対して、今回は打ち込み色が強い音作りのなかベタベタな歌謡フレーズが直で飛び込んでくるのでどうも息苦しさを感じてしまう。なんというか「都会に来ちゃったな」という感覚。
一曲目のイントロがシリアスすぎて身構えてしまうってのもあるのかもしれません。


構成する要素は限りなくハイレベルだけど、楽曲濃度の高さゆえ聴き始めるのに個人的にかなり気合がいる一枚。
ゲストやコンポーザーの塚越雄一朗さんとのデュエット曲はどれも良かったです。特に初音ミクとの「生声」対「機械声」のコラボは予想を大きく上回る良曲。

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②デジタルサウンドほぼ0のギターポップ。「間」のあるグルーブが好み。イントロなどに聴けるアルペジオフレーズやAメロ、Bメロで力強さを演出するギターが良い。この曲が一番気軽に聴ける。


初音ミクと留奈さんのデュエット曲。テンポ良いトラックの上を滑走する二人の歌声が素晴らしい。特にサビ最後の掛け合いにヤラれた!その勢いのまま飛び込んでくるミクの音階フレーズがまたうまい。ミクが「歌ってる」と表現するのはあまり好きじゃないんですが、こればかりは「生き生き歌ってる」としか言いようがない。良曲!


⑥frayjaさんをゲストに呼んだクールなロック。レーザーのような高音歌唱が快感。なかなかヘヴィなギターフレーズが満載で、3:12からのリフには濡れる。


テクノポップ。瑠奈さんにしては珍しいウィスパーボイスから号泣必須のサビまでグッドメロディの嵐。切なさを残しながらフルに音が飛び回るかなりの良曲です。歌い方がなんとなく丹下さくらっぽい。曲も「New Frontier」とかそこら辺の空気を感じる気が。曲調は完全にテクノサイド方面ですが、今作で一番NanosizeMirに通じるものがある気がします。


⑩タイトル曲。勢いのあるテクノポップジェット気流をまき散らしながら一直線に突き進むサビが快感。陰りのあるAメロからパッと視界が開けるような感覚。うーん、ここらへんの力強さはお二人の魅力だなぁ。

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良メロディの宝庫、サウンドも高品質、アレンジは遊び心もある。
でもCD全体だとどうもヘビロテにいかないというのが正直なところです。本作のイメージを一言で言うと「原色が強い」。ジャケのキャラのブルー1色ベタ塗りっぷりが本作の音を表している気がします。


やってることは「小さなせかい」大きくは変わらないはずなのに、ここまで受け取り方が変わるとは驚き。人間なにで好感触を得てるのかわからんもんだ。