soundwing-あの素晴らしい駄文以下のなにか

関西(大阪)のライブレポートを中心に更新。昔はフリーゲームや同人音楽のレビューをしてました。

What a Wonderful World / Pilgrim

3×6recordなどで曲を提供していたPilgrim a.k.a Hizuruさんのソロ。


3×6で披露していたダークステップ曲もあるのですが、メインとなるのはヒップホップ/グライムをコアにしたILLなトラック群。
不安を煽るウワモノに尖ったビートを織り交ぜ、陰世界に塗りつぶされたサウンドを展開しています。
低速〜中速のずっしりしたリズム/グルーヴでジワジワとリスナーを闇の世界へと沈没させていく。


ポエトリーリーディング/ラップ(HARD GU.W.CIさん)を取り入れており、歌詞でもどんどんとダークワールドへ。『仕組まれた条理と仕組んだ狂気 気が違っているのはどちらだろう』『狂ったこの夜で まともに生きてどうなるものか なぁ、そうだろうと王道を否定した男は やがてその王道に殺された』など世界をえぐりとっていく歌詞が強烈、それでいて光悦。


とにかくダークでハードな世界観に圧倒される。他の同人音楽作品とは空気が違います。
異世界に飛ばされる感覚はまどかマギカの結界(異世界)を思わせる。歪んだモノがコラージュされ、リピートされ、黒く汚れっていく世界。CD名がシャフトオリジナルアニメ1作目の「この醜くも美しい世界」とほぼ同じなのは偶然なのか、狙ったのか……。


ただアルバムの展開にあまり谷山がなく、全体では印象に残りにくい面も。病んだ音世界は文句無し。けどその異世界の入り口から奥に入れなかったという印象です。うーん、惜しい一枚。

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①女性ポエトリーリーディングを導入したトラック。冷たい威圧感を与えるバイオリンで一曲目から完全な陰世界を形成している。ポエトリーリーディングはかなりの表現力で、半笑いで恨みを告げるような語りからは狂気をヒシヒシと感じます。トラックを止めて挿入される「なんと素晴らしき世界」のフレーズが強烈に印象的。


②イルすぎるトラックのダークサイド・ヒップホップ。ウワモノのチャルメラが壊れた人間が鳴らしてるようで怖い……。どっしりしたビートと高速ブレイクビーツが交互にやってくるリズムワークもカッコイイ。HARD GU.W.CIさんによる数々のパンチラインも聴きどころ。グライムのようなトラックだけどラップはヒップホップ。


③ガチ・ダークステップ。自分の中でPilgrimさんのイメージといえばこの路線です。展開ほとんど無しにひたすらテラーなシンセとリズムを繰り返す。その切れ味がまた凄まじい!


④こちらも病んだ空気のヒップホップ。強烈なラインの多い早口ラップが自由奔放にリズムを刻んでて面白い。後期シャカゾンビのようなリズムのトラックも病んでるすげー狂ってる。今作で一番好きな曲です。


⑥3×6さんによる①のドラムン/ダークステップ・リミックス。Pilgrimさんのダークステップと比較するとベースの振れ幅が小刻み、といった違いが見れたりして面白い。かっこいいブレイクビーツです。


⑦kanabunさんの①リミックス。インダストリアルなイントロがかっこいい。ただひたすらドンヨリとした曲調は多少ダレがちか。

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徹底してダークな世界を演出したアンダーグラウンドミュージック・アルバム。


その徹底したillnessは3×6さえも凌駕しており、今までの同人音楽で感じたことの無いもの。「同人音楽らしくないな」なんて考えすら浮かびます。
この病んだ世界観、エグい音作りに加え、あともう一つくらいフックとなる要素があればな〜。


空気としてはRising Sun Novaさんとかに近い気がする。RSN meets 3×6?