soundwing-あの素晴らしい駄文以下のなにか

関西(大阪)のライブレポートを中心に更新。昔はフリーゲームや同人音楽のレビューをしてました。

”アニメミライ”として”映画館”で見たリトルウィッチアカデミア

前の記事リトルウィッチアカデミアが「王道は楽しい」というメッセージを経験できる、という趣旨の記事を書きました。それはこの作品を”アニメミライ”の一作として”映画館”で見たらなおさら強調されていました。

アニメミライの他3作品とリトルウィッチアカデミアの違い

アニメミライ 2013では、アニメ産業の復興を目標として若手クリエイターの4つの作品を同時放映されました。その4作品の最後を飾ったのがリトルウィッチアカデミアです。
この順番が絶妙。最初の二作「RYO」「アルヴ・レズル」は正直なところ微妙な出来。前者は新しい時系列展開や表現方法を模索し、後者はSFな設定を前面に押し出した作品。少しトリッキーで客が作品に入っていくのが難しい。*1
3作目「デスビリヤード」はかなり面白かったです。『謎の場所に連れて来られたサラリーマンとじいさんがビリヤードで勝負することに。内蔵が描かれた球を落とすたびに身体に異変が……?』という変化球な話。また全編にわたってダークな空気が充満しています。そして重要なのが結末を描かずに終わる点。AIRなどと同じ「結論は鑑賞者に委ねる」タイプの作品です。


デスビリヤード本編が終わると、客は大きなハテナマークを頭に浮かべながら自分なりに納得のいく結論を考えつつスタッフロールを眺めます。
そして次に始まるのはリトルウィッチアカデミア。一気に引きこむ導入、そして作中の王道ゆえの面白さ。ダンジョンに入っていく原始的なワクワク。前3作とは明らかにアプローチが異なる。この対比にやられるわけです。


そして最後に先生の正体が明らかになるシーンでハッとしました。”この短い30分のなかでしっかり伏線を張って回収していった!”。思わず「お見事!」と拍手しそうになりました。「デスビリヤード」が良くも悪くも結末を隠したがゆえ余計にこの点が目立ちます。
3つの変化球作品を見た後の「アニメミライリトルウィッチアカデミア」はyoutubeで単体としてみる「リトルウィッチアカデミア」とはだいぶ違うものに映るのではないでしょうか。

映画館でみるリトルウィッチアカデミア

またこの作品では”映画館”で見る、というのも大きな意味を持ちます。


まずは「体験」としての映画館。
前記事でも私が絶賛してるアツコがシャリオのショーを見てる冒頭シーン。ここは「映画館で映画を見てる自分」と「ショーを見てるアツコ」が重なります。
アニメミライはその性質上、作品の完成度は保証されていません。アツコのように冒険するつもりでドキドキしながら観に行く人が多く、なおさらアツコと自分の気持ちがリンクしやすくなっていました。


次に「環境」としての映画館
大画面のスクリーンは言わずもがな、PCのスピーカーとは比べ物にならない音響で聴ける音楽もカタルシスを生むのに一役買ってる。
ICOなどで有名な*2大島 ミチルのオーケストラ主体のBGM、特に終盤のドラゴンとの決戦から魔女たちが空を飛ぶ感動のフィナーレにかけての壮大なBGMは、映画館のスケールの大きい音響でこそ最大限に映えます。


これまた良い音楽が流れてるスタッフロールが終わると、アニメ製作現場をバックにアニメミライの総合スタッフロールが流れます。ダイナミックなBGMで煽っていた終盤とは一転、ここでまた気持ちがホッとして熱中して見てたリトルウィッチアカデミアが印象に強く残るのです。


youtubeで見て「前評判よりは普通だな」と思った人もいるかもしれませんが、映画館で見た人はこんなことも思ってたよ、とここに記しておきます。


あとついでに。今後について

私はわずか30分でアツコ達と一緒に冒険をした気になって伏線を全部回収するリトルウィッチアカデミアが好きになりました。だからテレビアニメ化するのは否定的だったりします。
コンパクトにまとまった作品を映画館というハレの場で見て、満足して帰れた、ってのに魅力を感じてます。

*1:プロジェクトの性質を考えると最初二作のような作品もアニメミライらしいと言える、とフォロー

*2:映画音楽やハガレンの方が有名なのかもしれませんがウチに来るような人はICOの方が納得する?