soundwing-あの素晴らしい駄文以下のなにか

関西(大阪)のライブレポートを中心に更新。昔はフリーゲームや同人音楽のレビューをしてました。

かまいたちの夜×3 三日月島事件の真相 / CHUNSOFT

説明不要の「かまいたちの夜」シリーズの3作目。
1→2と話が繋がっていたのと同様に3も繋がってる。
1は歴史に残る名作とされ、2でコケたと騒がれて続く今作。
ちなみに自分は2は1とは違うものとしてプレイ出来たからか珍しく肯定派です。


三日月島への集まり方が今までのような旅行と違って祈祷など明確な理由があっての集まり、しかも主人公(今作は主人公視点が4つ)によってその理由はまちまちということで、館の秘密を探るのか、宝探しなのか、前の事件の真相を見つけるのか、とどういう風にゲームが進んでいくのかあやふやな感じがしましたが、30分もすればクローズドサークルでの殺人ミステリといつものノリ。
新システムの4人主人公により同社の「街」のようなザッピングも駆使しつつ犯人を探し当てるのは面白かった。トリックを明らかにしていく連続選択肢は推理してる気分になれて熱中。
犯人の名指しは文字打ち込み方式なのでちゃんと犯人がわかってないと解けないのも良かったです。
読み物としては特に面白いってわけじゃないですけど、かまちたちにそういうのは求めていないのでOK。
1のような解決できなかったらどんどんと追い込まれていく展開もあってミステリゲームとしては満足!事件を解明するまで熱中してプレイしました。プレイする手がこんだけ止まらなかったゲームは久しぶり。


しかし、犯人を当てた後に○○ルートで急にオカルト方向へ。ちょっと寒い。我孫子さんらしいけど。
一応、あれは夢だったと片付けても良いようにはなっているのですがメインシナリオであれをやって欲しくなかったかな。サブシナリオとしては面白いと思うけど。


今回は過去のスパイ編や陰陽編みたいな本編以外の横道はほとんど無し。
バッドエンドは「あぁ、殺された」ってなエンドばかりで遊んでるエンドはごくわずか。エンドタイトル名も「格納室で何者かに」「なぜ○○が……?」とそのまんま死因ばかり。
しかも、ザッピングによる視点違いエンドが大半。エンディングリストは90個ですが実質40くらいと言っていいでしょう。バッドエンドが起こったら主人公を変えてほぼ同じ文章を読んでエンドを埋めて……と完全作業になってしまうのは正直苦痛でした。
バラエティ溢れるバッドエンドはかまいたちの魅力のひとつだと思うんで寂しいです。


恒例のアナザーシナリオもピンクのしおりと黒のしおりに1エピソードづつあるだけでボリューム不足は否めない。
肝心の内容は

ピンクのしおり

二次元絵を使ってて時代の流れを感じるなぁと。結構笑わせていただきました。
原作の設定をパロったノリが一昔前の同人ゲームっぽくて和む。

黒のしおり

しおりが挟まれる時の演出が怖すぎる。
その演出からホラーかと思いきや本編バッドエンドの真相を犯人視点から。
なるほど、こういうことなのね。改めて読み直すとただのアナザーストーリーじゃなくてちゃんと矛盾点無しなのがすごい。これは上手い叙述トリック
新本格派としての我孫子さんの本領を見せ付けられた気がします。三日月島事件の真相ってサブタイトルはこのシナリオを指しているとすら言いたくなる。


全体では、透と真理の出番が少ないのが残念。俊夫さんと香山さんに大きくスポットが当ってます。
やっぱりかまいたちの主人公といえば透であって欲しかったなぁ。
特に今回は俊夫さんの性格がむちゃくちゃ悪いから、なおさら透を中心にして欲しかった。
でも金のしおり入手後に見れるEDでは、(現実世界の)12年間の月日を経てついに透と真理もゴールまで来たか……と感傷深いものがありました。あのシーンを見るだけでも3をやった価値…いやかまいたちをやってきた価値があるというもの。
同時にどう転んでもコレで終わりなんだなと一抹の寂しさも覚えます。
透と真理が大好きな自分としてはこのシーンを最後の最後に持ってきて欲しかった。


結論としてはボリューム不足など不満もあるものの楽しめた。
ただ今作は3というより外伝と言いたくなるんですよね。
もしかして「3」ではなく「×3」だと念を押してたのは、我孫子さん自体これを3としたくなかったのではないかとも思う。「1」「2」のメインシナリオ+「外伝」で「×3(トリプル)」と。


1が好きで2を受けつかなかった人には微妙かもなぁ。もうアンチ2の人たちは1への思い入れが強すぎてどんなものを出しても完全に満足は出来ないと思う。kornは2ndまでという人に3rd以降を気に入らせるのは相当難しいように。(また微妙な例え
逆に2を「アレはアレでアリ」という人なら絶対プレイすべきです。
やるなら金のしおりを出すまでやってほしい。最後のシーンこそこのゲームの最大の旨みです。(そのためのバッドエンド回収が苦痛なのがまた問題なのですが


かまいたちの夜はわずか3タイトルしか出ていませんが、現在大量にあるノベルゲーム、それに繋がるフリゲ、エロゲ、同人ゲームへの影響ははかりしれない。この作品が生まれなければ世の中のゲームは現在とまた違った状況だったんじゃないかなぁ。
終わり方からして続編を作ることはまずないとは思われます。3を出したのは我孫子さんが「かまいたちに決着を着ける」と表明したかった節もある。
でも時間軸を戻してでもいいから、またかまいたちの夜シリーズを出して欲しいと切実に思います。
やっぱり透と真理のサウンドノベル・ベストカップルが大好きだ。