soundwing-あの素晴らしい駄文以下のなにか

関西(大阪)のライブレポートを中心に更新。昔はフリーゲームや同人音楽のレビューをしてました。

2020年 アルバム・ランキング TOP30

2020年のアルバム・ランキング!

1月中に書けた~;
世界が混乱状態に陥った2020年。いままでと同じではいられないからこそ生まれた作品も多い。
良い音楽は生まれ続けていました。

30 : maze / chelmico [日本 - ラップ]

勢いが止まらないchelmicoの3rd。
タイアップしてた「Easy Breezy」「Limit」といったカチッとしたトラックは「Joint」期のリップみたいでカッコいい。
同時に「milk」などmamikoさんはほぼ歌ってるメロウな曲もありと両極端なサイドが収録されている。
さらに長谷川白紙によるキテレツな曲や想い出野郎Aチームによる”ほぼバンドの曲やん!”ってな変化球もありでバラエティ豊か。
楽しいトラックとマニアックなトラックがアルバム内にいい感じに散らばっててダレない。

それらのグッドトラックの上でしっかりラップしていく二人のカッコよさは本物です。
なんだかんだでいま一番聴いてて心地よいラップをしてくれる。

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29 : Pillowland / JAM CITY [イギリス - サイケデリック/エレクトリック/ベース・ミュージック]

初期の音楽性からだいぶ変わった。
とてもポップ。どこか中性的。(本人のジェンダーが変わったとか)

ファジー全開なドリーミーな世界に持ってかれそうになる。ポジティブにとろける音像が心地よい。
それでいてインダストリアルなガチャガチャ感もある。
スチームパンク×夢世界?闇成分ゼロのマリリン・マンソン的な?
変わった空気です。ハマるとヤバい。

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28 : POWERS / 羊文学 [日本 - シューゲイザー/ロック]

こりゃ快作!
お得意のシューゲな要素もあるけど、なによりシンプルにロックとして曲の質がめっちゃいい。
儚さより勢いと衝動が際立ってて俺の心が完全KOされました。「Girls」「変身」の疾走感にはぶっ飛ばされた。

いままでの音源もよかったけど、またひとつ皮を破った感ある。意思の強さがキッと出てきたというか。声に張りがある。
難しいこと考えずに”良いロックアルバム!”と断言できる。

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27 : Terminus / JESU [イギリス - ポストメタル/エモ/シューゲイザー]

GOD FLESH・ジャスティンのメインとなっているプロジェクト。
もともとJESUは神聖/光の要素があったけど、今作はいままでで一番明るい作風かも。音はずっしりしてるのに重さを感じさせない。
曲によってはエモとも取れるぐらいにグッとくる旋律の数々。ここまでメロディ綺麗だっけ?

ポストロック、シューゲ、エモ好きなら100%気に入る良作。

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26 : You need the Tank-top / ヤバいTシャツ屋さん [日本 - メロコア]

ヤバTも早いもんで4枚目。今回はいままでとひと味違う!

一曲目の「Give me the Tank-top」からツービートでパンキッシュに突き抜けるのに驚く。ポップスよりメロコア/B-DASH系ミクスチャー寄り。
いままでの”固定概念を壊したるわ”ってな遊び心/冒険心より、こやまさんのピュアな音楽愛が詰まってる。そう、ヤバTは根っこにあるのがしっかりした音楽なんよな。あの頃の音楽好きなんやろうなぁ。

ずっと勢いがあって『RANCID V』みたいなアルバム。怒涛のBPM+リフがいままでになく音圧あってメロコアどころか後期MADみたいな感覚すらもなきにしにあらず。

あと歌詞の変化。
相変わらずアホなことを歌っているけど、ちょっぴり感動的な部分も入っている。ヤバT流の真面目さが垣間見える。
ラストのシリアス方面に完全に吹っ切れた「寿命で死ぬまで」は涙腺崩壊から必須!
ギャグ漫画家が1番泣けるエピソードを書ける理論!

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25 : PLUS / Autechre [イギリス - グリッチ/IDM/エレクトロニカ]

10月にビート&グリッチ少なめのアンビエント/IDM要素が強い『SIGN』をリリースし新しい作風で驚かせたオウテカ
その半月後、突如に今作『PLUS』をリリースしてさらに驚かせてくれました。

『PLUS』は従来のグリッチサウンドが中心。『SIGN』も大好きでどっちにするか悩んだけど……やっぱこの系統が好きだー、と。
ずっと脳の中をこねくりまわされてるような感覚。温度がまったく感じられない冷たさ。デジタルだからこそのサウンド。好き。

24 : Sixteen Oceans / Four tet [イギリス - エレクトロニカ]

エレクトロニカ/フォークトロニカ(死語?)のトップランナー。さすがの安定感。
16曲と曲数は多いけど
ビートの聴いた前半。
環境音のような中盤。
優しいアンビエントの後半。
……どの部分も聴きやすさがあってダレない。

気づいたら一周してまた聴きたくなってる。どんなテンションのときでもすんなり入ってくるアルバムです。

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23 : MAGIC ONEOHTRIX POINT NEVER / ONEOHTRIX POINT NEVER [アメリカ - エレクトロニック/アンビエント]

OPNの新作は架空のラジオがコンセプトだそうで。

ロックな曲やオリエンタルな曲もあるけど、基本はずっと霧がかかっているようなブラーな音像。
ラジオ特有の人間の生活感がありながらも聴いている場所は終末の世界みたいな感覚。
後半になると抽象度がアップして異空間の環境音みたいになる。気づいたらどっぷりハマって逝きそうになってました。

Youtubeで曲単体で聴くとピクリとも反応しなかったのにアルバムで聴くとず~~っと気持ちいい。
曲単体ではそれほどアンビエントしてないのにめっちゃアンビエントなアルバム。
アルバムを流れる重力が現実の地球と明らかに違う。フワフワしてる。

自分がいるのが現実なのか夢なのか、一度本当にわからなくなりました(あぶない
アルバムトータルだと過去一番に好きかも。

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22 : WRONG GENERATION / FEVER 333 [アメリカ - ミクスチャー/ハードコア]

元々アグレッシブなバンドが、完全にブチギレモードに突入して手がつけられなくなった8曲入りE.P.

前作にあたる1stフルでメロディアスなこともできるのを見せたあとに、超ハードコアなモードへと戻ってきた。
「WE'RE COMING IN」にぶっ飛ばされた人が両手を挙げて大喜びするであろうミクスチャー。

メロディがグンと減ってラップとシャウトが中心。グルーヴがヒップホップなミクスチャーなのもドツボ。
かと思えばエモーショナルに歌い上げるピアノバラードやQuarashiみたいな渋いサンプリングのヒップホップもあって最高っす。

ブチギレた理由は完全同意しかねるのだけれど、このアグレッシブさは問答無用でアガる!
ライブがさらにヤバいことになるんだろなー。

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21 : S.A.L / KYONO [日本 - デジタル・ハードコア]

前作の路線は変えず。驚きはないけど全曲が良い。

前作の「DOMINATION」、MADの「Chaos Step」とかにあるガバキック/ブレイクビーツのデジタルハードコア色はちょい減退。
突進とグルーヴで揺さぶるハードパート → 激キャッチーサビでキメてくるパンキッシュなアルバムです。
突進パートの合間に出てくるグルーヴパートがほんとカッコいい。

頭より身体が先に反応するストレートにカッコいい曲が継続して残ってるのはもちろん、KYONOさんの声がやっぱカッコええんやなぁ。
初期MADみたいなメロディの曲がひとつあるのも面白い。まだこういう歌い方できたのかー。

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20 : Shiver / Jonsi [アイスランド - エレクトロニック/ベース・ミュージック]

Sigur Rosのヨンシーのソロ2作目。

前作「Go Do」のようなアコースティックな朗らかさは無く、ダークかつ神秘的な作風。1stとかなり違う。

A. G. Cookの全面参加が大きのか、デジタル要素やベースミュージック要素が入っててSigur Rosともまた違うサウンドが展開されてる。バンドでなくわざわざソロでやる意味のある音楽です。

4つ打ちダンスチューンなんかもあるし、全体的にメロディがわかりやすくていままでよりポップなヨンシーが聴ける。
美声をはじめとする彼の魅力はそのままに、バンドの壮大な音楽から身近な音楽へと少し寄ってきた一枚。『Go Do』の流れを組みながら色んなことに挑戦するヨンシーが聴ける!

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19 : The Consuming Flame: Open Exercises in Group Form / matmos [アメリカ - エクスペリメンタル]

99組のアーティストと99BPM縛りでコラボ。2時間58分の3枚組大作アルバム。
OPN、Pig Destroyer、Yo La Tengo、Matthew Herbert、Mouse on Marsとビッグネームも参加。
各者が提供したループ、音をサンプリングした結果……出来上がったのはmatomos以外の何者でもないおもしろ変態アルバム。

ダブテクノ、グリッチIDM系もあればブレイクビーツみたいな曲もある。特大ボリュームなのに飽きずに聴ける良作です。
ファニーな音像でずっとからかわれてる気もするけど、シリアスな作り込みから本人たちは真顔な感じ。真の職人が変態になっている。

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18 : Thaw / くるり [日本 - ロック]

デビューの1998年から2018年までの未発表作品集。
未発表とはいえど曲のクオリティはめちゃくちゃ高い。正規アルバムに入ってても一切違和感ない。

酔っぱらいがスキップしながら歌ってるみたいな「ippo」
4 heroみたいなジャジードラムンベースを人力でやるインストナンバー「ダンスミュージック」
脳みそがとろけそうな暴走サイケデリックプログレ・ロックで最後はほぼノイズ化する「人間通」など。
色んな要素をすこし雑にごった煮してて『図鑑』時代のテイストがある。あとロックな勢いがあるのが嬉しい。

最新のくるりも大好きだけど、いまのくるりには無くなったものがある。
ぶっちゃけ多くの人にとって最近のアルバムよりこの未発表曲集のほうが”これぞくるり!”ってなるんじゃなかろうか?必聴盤です。

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17 : Fake It Flowers / Beabadoobee [イギリス - インディーロック]

2020年の新人賞。

最近は”e.p.はいいのにフルアルバムは……”ってパターンが多いなか、話題のニューホープが1stフルへの期待に見事に応えた例。
こちらの想像を裏切ってるのも含めて”正解”と言って良いデビュー・アルバムじゃないでしょうか?

Dinosaur Jr.やPavementに通じる甘酸っぱいダーティーさが心地よい。
ローファイ/ローテンションなままぶっ放す感覚が一曲目の「Care」から炸裂。
ノイジーなギターが効いてる曲もあれば、ストリングスが聴いてる素敵なロックバラードもあり。
捨て曲無しでどれもハートが震えるエモさがある。

ラスト曲が”Yoshimi!Forest!Magdalene!”のシャウト連呼で終わるのも最高。新しいロック・クイーンの登場っす!


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16 : folklore / Taylor Swift [アメリカ - カントリー/アコースティック/インディーフォーク]

2020年を代表する一枚を挙げるなら……コレじゃないでしょうか。

ポップス・アイコンになってたテイラーが初期のカントリー/アコースティックな要素へカムバックした。さらにインディー・フォーク系の静のディープな世界へにも足を踏み入れて。

まさかのBon Iverとのコラボ、そしてThe Nationalアーロンの全面参加でサウンドの説得力は間違いない。
なによりテイラー自身の作曲センスと歌い手としての素晴らしさに震えました。

予告ゼロでリリースされ”テイラーとポップスな人でしょ?”って人達も黙らせた見事なアルバム。
こんな世界状況だからこそできたのかもしれない一枚。
2020年はテイラーの復活元年!

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15 : ROVO / ROVO [日本 - 人力トランス]

ダンスミュージックであることは変わらないけどテクノ/トランスよりロックの側面が大きい。ドラムンベースの側面から見てもロックなサンプリングをフューチャーしたドラムンって感じ。
人間が演奏している”バンド”って感じが強くていままでとは違うROVOを展開しててめちゃくちゃカッコいい。
いままでと違った方法論で踊らせにきてる。

でも自分のランキングではROVOの音源でTOP5以内に入ってないのは珍しい位置になりました。
というのは6曲中ラスト2曲がゆったりめってのがアルバムとして聴いたときにちょっとバランス悪いなと思ってしまうのですよね。「Novos」と「SAI」。どっちも素晴らしい曲なんですが……うーん、アルバムとして見た時はこの位置で。
このバンドは期待値が高すぎるので。めっっっっちゃくちゃ好きなアルバムなんですけど過去作との相対的に。

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14 : Poom Gems / Hudson Mahawk [スコットランド - 変態ヒップホップ/ベース・ミュージック]

1年のうちに未発表曲集をまさかの3枚もリリースしたハドソン・モホーク。

しかも変態だけどなぜかノレる初期の魅力でいっぱい。ぶっちゃけ最近の正規アルバムより全然いい。
別の窓でなんか再生してたっけ?”ってぐらいにぐちゃぐちゃなリズムなのに、どうしてこんなグルーヴあるの?!

3枚の中からは、変態すぎてアホになってるノリがあればシリアスにドラマチックな展開も有している2枚目の『Poom Gems』を選択しました。

全部youtubeにフルアップされてるので未聴の方はぜひ!
説明するよりこの独自のグルーヴに触れたほうが早い!

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13 : いいね! / サニーデイ・サービス [日本 - ロック]

初聴きの衝撃は2020年で1番。
元チョモのドラムを迎えてスリーピースになったサニーデイが放つアルバムはパンキッシュと呼べるほどの勢いがある。

”曲の途中から再生してしまったかな?”ってフルギアで始まる一曲目の。再生して0.1秒でぶっ飛ばされた。

ここ数作はエレクトロニカにも足を踏み入れて狂気的なほどストイックなアルバムだったけど、今作は根っからのロックアルバムです。その象徴が4曲目の「春の風」。サニーデイ史上で1番勢いがあるかもしれない。青い衝動。

あとシンプルにメロディがめちゃくちゃいいのですよね。難しいこと考えずにスッと胸を揺さぶってくるメロディ。
良いアルバムです。

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12 : ENERGY / Disclosure [イギリス - ディープ・ハウス/テクノ ]

ラテンやサンバなどプリミティブなノリを携えた、いままでとは違った毛色の3rd。
脳を使わずとも身体が自然に踊りだす。野蛮と言えるくらいノリノリ。
さらにワルいダンサブルを軸にしたままdisclosureのスタイリッシュな部分も入ってくる反則っぷり。

今作の特徴を端的に表してるのがリードシングルの「ENERGY」。”disclosure、どうした!?”と驚く能天気なトライバル・ビート。かと思えば中盤にクールなシンセが入ってくる。たまらんわー。

他の曲も熱量に違いはあれどとにかく踊れる曲ばかりがそろってる。
正直2ndは落ち着きすぎて好きじゃなかったんだけど今作はツボ。踊りたくなったらこれをかける!

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11 : First Contact / Lastlings [オーストラリア - エレ・ポップ/シンセ・ポップ]

男女二人組のエレ・ポップ/シンセ・ポップ。
哀愁のあるグッドメロディがリズミックなトラックに乗る。CHVRCHES/Purity ring meets Delphicみたいな?
さらにDisclosureあたいのDeep Houseのもつオシャレな深み。つまりは最強です。

1曲目「Deja Vu」で、メロディアスなイントロからに想像以上にドープなシンセベースが効いてて一発KO。腹と脳にズシンとくるベースがホント気持ちいいのです。

幹となる歌とベースを他の要素が満点に近いかたちで支え/彩る。
デビューアルバムにして恐ろしいほどのクオリティです。

良質な音楽をサクッと聴きたいなって気分のときによくかけてました。

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10 : Global Rock / Waltari [フィンランド - ミクスチャー/メタル]

変態ミクスチャー・Waltariの5年ぶりの新作。今回はここ数作品と一味違う。

『Release Date』以降のBPM抑えめ/派手なメロディ少なめの真面目なメタル&ロックではなくいい感じにミクスチャーしてます。
めっちゃメタルだけど陽気な空気に溢れてる。『So Fine』時代ほどぶっ飛んでないけど『Space Avenue』時代の音が熱くてシリアスだけどごった煮な曲調。

メロディがポップでいいのですよね。北欧よりアメリカな感じがする。
全体的にポップなんだけどメタルなリフはかなり重くてカッコいい。ヘヴィネスとポップネスが見事に同居。
かと思えば4つ打ちにソウルフルな女性ボーカルが絡む「Back to the Bottom」みたいな曲もあって。
一撃必殺チューンはないけども、聴いてて楽しい曲ばかりがそろってる。久しぶりに”いいぞ!”と心から思えるWaltariアルバムです。

とにかく”根っこにガチメタルがありながらポップな空気で充満してる”ってWaltariが戻ってくれたのが嬉しい!

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09 : Women In Music Pt. III / HAIM [アメリカ - ロック/ポップス]

サンプリング、ヒップホップの要素を大胆に取り入れててびっくりしたけど高クオリティで素晴らしい一枚。
ヒップホップ・ビートの1曲目「Los Angeles」が本作を端的に表している。初っ端から今まで違うとわかる。
アナログな音作りを完全に自分たちのモノにしていて一皮向けた感じがします。

ピュアなロックからの移行は変化として大アリ。
バンドサウンドがゼロの「I Know Alone」とかもめっちゃ気持ちいい。それでいてしっかりとHAIMを感じる。
シャープさよりメロウなノリ。でもポップで聴きやすい。旧き良きをリスペクトしてるからこその新時代をヒシヒシと感じるロックアルバム。

あとボートラが素晴らしい。
「Hallelujah」は涙モノの弾き語りカントリーバラード。
「Summer Girl」はCan I kick it?とWalk on the wildsideをサンプリングした最高にレイドバックなナンバー。

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08 : Ghosts V: Together / Nine Inch Nails [アメリカ - アンビエント/ドローン]

ステイホームがはじまってすぐの5月。告知ゼロで突然に2枚同時リリースされたNINの無料インスト・アルバム。

強迫性障害のBGMみたいな『Ghosts VI: Locusts』も”こんな時期に絶望100%の音源を出すの最高”でありましたが、一枚選べと言われたら希望に満ちたアンビエントの『Ghosts V: Together』。

ドローンが基本。メジャーコードを使っていることが多いんじゃないでしょうか?
NINとは思えないポジティブな空気。圧倒的な白の世界に心が洗浄されます。昨年は寝るときのBGMに多用しました。
でも最終曲のエンディングで急に「TESTUO」みたいなインダストリアル圧迫ビートが流れてびっくりする;

このアルバムをNIN名義で出してくれるのに……あぁ、やっぱ俺はトレントについていきます。

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07 : 愛のひみつ / ハンバートハンバート [日本 - フォーク/ロック/歌モノ]

ハンバートハンバートの10th。
ほとんどの曲がバンドサウンド。エレキも使った曲もあってロック/ポップスなテイストがあるのは本作の特徴。でも基本は安定のハンバートハンバートサウンドです。

ほのぼの裏に闇が隠れた歌詞が今作も素晴らしい。

”互いの心はこんなにも通いあっているのに 灯りを消して見上げると ああ満天の星”と密会を歌う「満天の星」。

”分かれ道に一人立ったとき あの人がいたのよ片方の道に”の歌詞がゾクッとする結婚できないカップルと心移りを歌う「もうひとつの道」

”君が好き ただただそれだけを言うためにぼくは家をでる 君がたとえ他の男と付き合ってしまっても変わらない”とピュアな歌詞もタイトルを照らし合わせると狂気に感じる「パラレルワールドでは君と」

”プラスチックでできているはずの胸が 張り裂けそうに痛んで痛むのよ”とロボットの恋をかわいらしく歌ったと思えば”明日の朝 あなたが来る前に 自分で壊してしまうわ”と落とす「試作品第12号」

”そろそろ買い物行かなくちゃ 冷蔵庫の中空っぽだ しっかりしてよねお母さん 幼い子どもに怒られた”に胸が張り裂けそうになる未亡人を歌った「手のひらの中」

をテーマにしたアルバムでどうしてこんな悲しい歌詞が書けてしまうのか。一曲聴くごとに小説をひとつ読み終えたような感覚。才能が枯れること無い天才です。

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06 : Ohms / Deftones [アメリカ - ヘヴィロック]

Deftonesから久しぶりに文句なしの良作。

ここ数作は重いグルーヴはカッコいいけどなんかボヤッとしてる……って印象でしたが、今作は耳に残るリフやフレーズがいっぱい。
「Urantia」冒頭の高速ザクザク・ストロークや「Pompeji」の歪み続けるリフとかクセになります。

あと音色やメロディだけじゃなくグルーヴがすごい。
よく”あのフレーズいいよね”とか話すけど、Deftonesは”あのグルーヴでこう身体を動かすといいよね”って感覚がある。
今作はその感覚を特に感じる。

ジャケットの世界観そのままに、黒/灰色の音作りだけど独特のセクシーさを持っているヘヴィネス・ミュージック。
その薄暗い音の洞窟を抜けた先に待っている新機軸のリフ「Ohms」でぶっ飛ばされました。
実は初聴きのときアルバムはそこまで良いと思わなかったのですが「Ohms」のエンディングがすべてを回収して持ってった。

そのあとは何周も聴けば聴くほど味が出てくる。ずっと新しい味が出続けるスルメ・アルバム。

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05 : 3020 / SuiseiNoboAz [日本 - ロック]

2020年だからこそ生まれ落ちた傑作。
「3020」という名曲を基準にしたコンセプト・アルバムとも取れる。歌詞とアルバム構成が見事。

実質一曲目「3020」でいきなりのハイライト。未来まで音楽が残ると信じて千年後の世界を想像するラップがクールな演奏に乗る。その静かにエモい空気を維持してアルバムは進み、「SUPER BLOOM」のラスト90秒の大轟音とともに爆発で一度のエンディングを迎え、最終曲の静かな「それから」のカーテンコールで「3020」に再リンク。見事!!

最後の歌詞が
”やがて狂いそうなほど青い空いっぱい 長いエンドロールが流れ始める
その全てを見終えるまでは 決して席を立つんじゃないぜ”
カッコよすぎる!

サウンドももちろん素晴らしい。
スタイリッシュだけどシティポップとかトラップとは違う。オルタナからのスマートさが唯一無二。
削ぎ落としまくってる楽曲たちのなかで、決して場を乱さずに動き回るベースがすごい。
新しいメンバーと新しい音楽をしながら、昔のボアズらしさも感じさせてくれる。
ホント今作ヤバいっす。

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04 : Notes on a Conditional Form / The 1975 [イギリス - ロック]

アンビエントまで手を出したコアな部分とポップな側面が見事なバランスで成り立ってる名盤。

突然のマリリン・マンソン化で世間を驚かせた「People」でスタートからかっ飛ばしておいて、次曲のクラシカルなインストで即落とす度胸がすごい。それが納得いくアルバム構成なのがまた素晴らしい。

単体だと地味に感じたテクノビート系統の曲がアルバムだと効果的に働いてる。
アクセントが欲しいタイミングで特徴的な曲がビシっとやってくる素晴らしい曲順。
過激なフックはないけど、ずっと”静かな熱さ”を感じるロックアルバム。
アルバムトータルとしては今までで一番好きかも。

とある人が本作をアンビエントの側面から語って<興味深いが無視できる>として捉えているのに納得しました。
全曲最高なのに流し聴きできるのが今作の魅力なんよなぁ。

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03 : DRIFT Series 1 - Complete / UNDERWORLD [イギリス - テクノ/ジャム]

いままでデジタルでリリースされたDRIFTシリーズの6枚+ライブ音源をまとめた49曲入り。トータル時間:6時間56分。(DL版ならこのボリュームで3260円!)
ひとつひとつだと実態が掴みにくかったDRIFTシリーズですが……なるほど、まとめて聴くとめちゃくちゃ面白いことやってる!
今回のコンプリート版は10曲にまとめらてた『Drift Series 1』ともまた違いmす。全部を聴いて真の良さがはじめてわかります

バキバキのテクノ、ミニマルに近いストイックなテクノ、アンビエントRezに通じるトランシーな曲、ブレイクビーツ……とジャンルは多彩。
全体的にかなりコアなテクノをしている。UNDERWORLDはテクノユニットのなかではメロディアスなイメージがあるけどかなりバキバキです。OrbitalとかKEN INISHIIとか好きな人の方がピンとくるかもしれない。

また新機軸として生演奏(風?)を取り入れた曲も多い。
テクノの要素にジャズを取り入れたみたいなサウンドでコレがよい!
エクスペリメンタル・ジャズみたいな「Hndred Wight Hammer」。淡々とした生ドラムに数少なめに音を入れてく「Poet Cat」。爽やかなデジタルサウンドにジャジーな生ドラムを刻んでいく「Tree and Town Chairs」など。
NEU!やCANなどのミニマルな即興ジャムっぽくてたまりません。

バキバキテクノになっても即興ジャムでもカールの声が見事に溶け込んでるのも聴きどころ。ちゃんとUNDERWORLDしてます。

外に開ける派手さはないけど、各曲のカラーはしっかりしてて実は聴きやすい。約7時間のアルバムでも最後まで聴けちゃうモンスター級の作品。『Oblivion with Bells』以降がパッとしないと思ってる人にもぜひ聴いて欲しい一作。

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02 : Cheddar Flavor / WANIMA [日本 - メロコア]

9曲入りミニアルバム。僕たちの大好きなメロコアバンド・WANIMAが帰ってきた!
メジャー以降はポジティブイメージと若者人気に応えようとしてたけどここにきてピザオブデスに抜擢された時代の、「Hey Lady」や「1106」の頃のアグレッシブさがある。

開始20秒は歌謡曲っぽいメロディで”ん?”となるけど、直後から激速BPMにギアを上げてあとは圧倒されるばかり。
あとメロディが本当に良い。アルバムのピークにくるメロディがずっと続くみたいな感覚。街中で聴いてても拳を振り上げてシンガロングしてしまいそうになる。

ただ原点回帰しただけではなく「Cheddar Flavor」のラスサビに出てくるブレイクダウンっぽい大味なドラムはモダンなラウドロックの要素がある。「Faker」の曲展開はメロコアの範疇を越えてる。「春を待って」のメロディはポップなWANIMAを経ての曲調だと感じる。経由してきた道をしっかり消化/昇華してる。

あと音源の先に見えるメンバーの顔が笑ってない。全力の顔をしてる。そこが好きなのかもしれない。
必要以上に笑ってない。自分たちのための音楽で突き抜けてるメロコアの熱さ。
握りしめた拳で応えるべき音楽。ホールでなくライブハウスの音楽。勢いと切迫感と熱さがある。

このタイミングでシリアスでパンキッシュなアルバムを出してきた意味も色々と考える。
2020年で1番エモかったアルバム。

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01 : selfy / 山本精一 [日本 - 歌モノ/エクスペリメンタル]

山本精一さんの歌モノアルバムが大大大名盤!今作は一味違う!
『Falsetto』と『童謡』は”すこしづつハマってくるかな”だったけど今作は1週目から大興奮。

2010年以降の山本さんの歌モノはフォークを経由したボーカルと歌に寄り添うギターが基本だった。
しかし今作はノイジーなギターソロが入ったり、唐突なエフェクターの変化があったり、ミニマルなアコギがあったり……とバラエティ豊かなことをしてる。
明確にロックで『ラプソディア』に近いけど、もっとバラエティ豊かで波止場っぽさもあるかも。

山本さんの実験的な側面もしっかり楽しめる音源。
ライブではこういったプレイもよくやってるけど正式な音源になるのは珍しい。

”今回は違うぞ!”と思ったのは「Simon」の後半5分がノイジーなギターソロで埋め尽くされたこと。こんな歌モノ音源いままでなかった!
ハンマービートに羅針盤のファニーな曲っぽいメロディの「Jargon」めっちゃ好き。ノイズからリフに変わった瞬間の快感!!
最後に淡々とリフを奏で続けるミニマルなアコギが印象に残る「FUTURE SOUL」でちょい怖い空気で終わるのも最高。

純粋に歌モノのメロディとしてもここ数作で1番好きです。演奏と歌をあわせてとてもキャッチー。そして底が見えない。
自分の山本さんの好きな部分がパッキングされてる音源がついにリリースされた。ホント嬉しいっす!

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Taylor Swift、SuiseiNoboAz、WANIMA、NINはコロナ渦だからこそ生まれたアルバムであり、2020年を象徴するといっていいと思う。
作品に集中した山本さんや、未発表曲を大量に出してきたHudson Mohawkやくるりも同じことが言えるかも。

かと思えばHAIM、Disclosure、Deftonesのように純粋にレベルアップした新作を届けてくれたバンドもいる。
Lastling、Beabadoobeeのように楽しませてくれそうな新人もちゃんと登場してる。

意外だったのが、こんな世の中だけど怒りをアグレッシブネスにしてぶつけてるバンドが意外といない。
本ランキングならFever 333くらい。RATMもおとなしかったし、日本のバンドはテニスコーツ七尾旅人が単曲で静かに怒っているケースはあったけどアルバムとしては皆無と言っていいのではなかろうか?
というのが今年全体を見てて思ったことです。

昨年と同じくランキングを元にYoutubeのプレイリストを作成しました。
在宅ワークのBGMにでも使ってください。いくつか”おっ!”となる曲が見つかるはず。
https://www.youtube.com/watch?v=-ir91_XsJeA&list=PL7A-dJHdhdelBcstJ_LdPaQobaan0NCd1


また今回はTOP30には入れなかったけど良作だった”次点”アルバムのプレイリストも作りました。
思いつくままに挙げていったら55枚に;
こちらもぜひ~。
https://www.youtube.com/watch?v=AZKPd3k6O6A&list=PL7A-dJHdhdekBRYhxClmczwTvooGSCtK4

[次点アルバムリスト] (☆はTOP30に入れるか最後まで悩んだ特にオススメ作)
KiCk i / ARCA
Grow apart / Awesome City Club
Always Tomorrow / Best Coast
Sudden Fictions / BO NINGEN
Shadow Of Fear / Cabaret Voltaire
Domingo / chip tanaka
SAD HAPPY / Circa Waves
A Beautiful Revolution Pt. 1 / COMMON
CMFT / Corey Taylor
Civic Jams / Darkstar
Dinner Party / Dinner Party
☆Wonderful tomorrow / DJ HASEBE
LOVE/LIKE/HATE / eill
ANTI-ICON / Ghostemane
The Time It Takes / Goldmund
Song Machine, Season One: Strange Timez / Gorillaz
☆Lives By The Sea / Gotch
Healer / Grouplove
Domicile / Helios 
Eleven plus two / Twelve plus one / Helsinki Lambda Club
no song without you / HONNE
Faith / Hurts
eye / Husking Bee
☆BEFORE EP / James Blake
YES / jan and naomi
Seeds / jizue
☆Healing Is A Miracle / Julianna Barwick
SOLIDARITY / KEMURI
IN DUB / KMFDM
closer / Last Electro
~how i'm feeling~ / Lauv
Serpentine Prison / Matt Berninger
I Can Feel You Forgetting Me / Neon Trees
some kind of peace / Ólafur Arnalds
SUCK MY WORLD / oral cigarettes
極彩色の祝祭 / ROTH BART BARON
☆RTJ4 / Run the Jewels
Kiss from the darkness / Scandal
☆SLENDERIE ideal / V.A.
WAVE / Special Others
The New Abnormal / The Strokes
☆Portals / SUB FOCUS & WILKINSON
The Slow Rush / Tame Impala
☆Imploding The Mirage / The Killers
VISTA / toconoma
tofubeats - RUN REMIXES / tofubeats
Sister / Ultraísta
十三月 presents 難波BEARSオムニバス「日本解放」 / V.A.
synonym / パスピエ
何者 / ポルカドットスティングレイ
Anyways / 環ROY
☆HYSTERIA / 鬼束ちひろ
ねえみんな大好きだよ / 銀杏BOYZ
☆THE PARK / 赤い公園
十 / 中村一義