soundwing-あの素晴らしい駄文以下のなにか

関西(大阪)のライブレポートを中心に更新。昔はフリーゲームや同人音楽のレビューをしてました。

sync of eschatology / KPDrecords


KPDrecords主催・kanabunさんオリジナルのアルバム。


インテリジェンスとダークが融合するIDM、ドリルン、エレクトロニカ系。
耳をつんざく電子音、不可思議なリズムのブレイクビーツ、とコマーシャリズムがほとんど無い暗いサウンドです。
ブレイクビーツ主体のリズムミュージックというより、どちらかと言えばノイズや不穏なシンセによる空間的な音作りの方が前に出てる。


おもわず「今AphextwinのCDかけてたっけ?」と錯覚するほどのクオリティを持っています。シンセの重ね方、リズムの刻み方ともレベル高い。
ただいかんせん自分にはシリアスすぎるきらいもあります。通しで聴くにはかなり体力が必要。それでも過去作に比べるとフックがあるので聴きやすくはなっているのですが。


病院を思わせる白いデザインやジャケ中身の娘の服装などから「Come on my selector / Squarepusher」を彷彿とさせるところもありますが、コチラはあのPVのような子供の反撃劇ではなく、一方的に閉じ込められた閉鎖的、退廃的な空気が充満しております。興味深い、実に興味深いです。



①生命維持装置を思わせるSEからスタートし、アブストラクトなヒップホップ・ビートが入ってくる。病的な清潔感が怖い。この一曲でCD全体の空気がわかるような曲。後半のノイズが気持ちイイです。イントロのSEはアルバム通して色んなところで聴けます。


コーンウォール一派直系のオドロオドロしいドリルン。前半はおとなしく、後半はうるさくなるリズムが印象的。赤ん坊……というより成長出来ていない子供のような声が怖い。


④電子音と空気の音のノイズ。人間が苦手意識を持っていそうな音の集合体。雰囲気作りはうまく、気分によってはハマる。ただこういう曲が今作を聞き難くしてる面もあるかも。電子音がとぎれたその先に広がるのは…?


トリップホップ系の深いトラック。精神世界の海を潜っていくような感覚になれる壮大な一曲。あくまでもダークですが。ループフレーズとノイジーなビートの絡みが好き。お気に入りの一曲。


⑥ここにきてやっと穏やかなフレーズが顔を出します。温かい雰囲気のエレクトロニカ。すこしづつ音が広がっていくポストロック調のウワモノに飛ばされます。


⑦ドリルン。前曲から一気に突き落とすダークなイントロに驚きますが、中盤からaphextwinを思わせる人間味溢れるシンセが入ってきます。ビートの刻み方もむちゃくちゃカッコイイ!今作で一番のお気に入り。


⑧ノイズ。ここでまた例の電子音が復活。CDはよりダークな方向へ。


⑨ドラム大暴れのドリルン。ここまで変態なリズムだと実は好みから外れたりする。ついに電子音も一定の音しか発さなくなり……。


⑩暗〜いフレーズにずっしりしたリズムのスモーキーなトラック。前半の混沌としたシンセの応酬が良い。ダークながらかなりグルービーなリズムでノレる。これもお気に入り。


⑫無垢なトイトロニカ風のフレーズが印象的な明るい曲で締め。ただここまでの曲順を考えるとこれは楽園なのかそれとも……。そういや「Come on my selector」の女の子は犬のぬいぐるみ(stuffed toy)を持っていたよなぁ。




重苦しい雰囲気でいっぱいのシリアスでダークなIDM、ドリルンCD。
同人音楽らしくフックを取り入れて聴きやすくする……ってなこともほとんどせずにひたすら退廃的なサウンドを繰り広げるコアな一枚です。


一曲一曲の質の高さなかなりのもの。CD全体ではもうちっとフックが欲しかったかなぁというのが個人的な感想です。元々ドリルン系はブレイクビーツの暴れっぷりのわりにリズム音が軽いのが苦手というのがあり、この作品も例に漏れず音が軽めってのもあるかも


電脳電波系と言えそうなある意味オタ好みの荒んだ空気かもしれませんが、サウンドも良くも悪くも人を寄せ付けない尖っているので聴く人は選びそう。