soundwing-あの素晴らしい駄文以下のなにか

関西(大阪)のライブレポートを中心に更新。昔はフリーゲームや同人音楽のレビューをしてました。

2014/08/29 百人組手番外篇〈PSYCHICS FALL WEST〉(七尾旅人、GUARDIAN ALIEN、山本精一、砂十島NANI、Seiho、BIOMAN) @ CONPASS


七尾旅人が主催するコラボ即興イベント。ずっと興味があったのですが*1開催は東京のみでした。
しかし今回ついに関西上陸!めちゃくちゃ楽しみにしてました。


七尾旅人のネームバリューもあってかソールドアウト。
即興より歌モノを聴きに来たお客さんが多かったように感じました。

BIOMAN

開演前のDJはBIOMAN(NECO眠る)。
常識外のDJでたまにピアノ曲をかけたりはしてるものの7割は音声。インタビュー、独り言、英単語レッスン……などがフロアに淡々と流れてシュール過ぎる雰囲気になってました。


ぶっ飛んだのが、坊さんが職についた意気込みを語るインタビューの途中に感動的な音楽を最高のタイミングでかけた瞬間。インタビューと音楽を”繋げる”DJ。天才か!?


七尾旅人もちょっとだけ登場して歌で場を暖めたものの、その後5分間くらい英単語レッスンをかけてフロアは混乱の極みへ。
どうすんだよ、この空気な状態のまま本編へ(笑

七尾旅人

オープニングということでサッと弾き語りソロ。


30秒ほどの短い曲のあとに「星に願いを」→「サーカスナイト」
「星に願いを」は流れ星が目に浮かぶ気分にさせてくれるアレンジを入れてくることが多いけど今回はそこまで没頭させずに軽いタッチで歌ってました。
「サーカスナイト」ではTOSHI-LOWよろしく肩車でフロア突入。


自己紹介的なポジティブな意味で軽いソロパートでした。

Seiho

自分の立ってた位置がたまたまSeihoさんの卓のど真ん前だったので顔を直視できないレベルの近さでした。


スタイリッシュな音使いと肉体的なビートが共存するSeihoさんのライブ。やっぱりカッコイイ!
最前で手元をがっつり見れたわけですが、キーボード(シンセ?)を弾いてる場面がけっこう多くて想像してたよりライブ感が強いんですね。「I Feel Rave」のメインフレーズは全部弾いてました。
途中で七尾旅人がは入ってきて音(声)を加える場面も。

Seiho × 砂十島NANI

BOGULTAのNANIさんとミニセッション。
SeihoのトラックにNANIさんのビート。NANIさんはパワフルに叩くというより細かいフレーズでSeihoさんのトラックに合わせにきてました。

Seiho × 七尾旅人

Seihoさんと遊んでたらできたという新曲。ノンビートの透明感ある歌モノ。歌詞がうろ覚えで若干グタグタな感じに。


全体的にSeihoさんのトラックの良さは言わずもがな。ですがNANIさん、七尾旅人ともセッションによる化学反応はもっと行けたんじゃないかなぁ、って気もします。

山本精一 × 七尾旅人

山本さんの前にはマイクは用意されておらず完全にギタリストモード。音は完全にノイズモード!


スプレーや瓶を擦りつけて恐ろしい大爆音ノイズを発してました。ROVO×七尾旅人の時もやってたけど百人組手の時はスプレーでのギタープレイがデフォなのか?”シュゴゴゴゴゴ!!!!”と常識的な音量を突破する瞬間が何度か。これからセッションが続く七尾旅人を完全に殺しにかかってました。


それでも山本さんはキレ気味で”もっと音量上げろ!”とPAに指示を4回ほど。終いには”七尾旅人の音も上げろ!”と指示。


こっちからすれば十分な大爆音。耳を押さえる人が続出してました。
山本さんのギタープレイが壮絶すぎて七尾旅人が何をしてたかあまり記憶に残っていません。たぶん叫び続けてたと思う。今回は完全に殺されてた。

ギター以外にもカオシレーター(?)を高速PCタイピングのようにタッチしまくってました。とにかく指が動く。音をじっくり作る暇があれば指を動かす。そんな攻めの演奏でした。


終わった後に山本さんが「アンプの音が小さいなぁ。なんも聴こえへん」とポツリ。あの凶々しい音のあとにいうセリフじゃありません……。
でも確かにEarthと対バンした時の世界の崩壊する感じさせる爆音には達してなかった。

山本精一 × 砂十島NANI

過去にも何度かやってる組合せかな?


山本さんはノイズよりジャンクなギターを弾きまくる。
前の客がのけぞるぐらいにギターをグワングワン振り回して……ブツンとシールドを抜いたかと思うと持ち上げて地面に叩きつけ。


っひゃーーーーーーー!!キレキレや!
終わり方はスゴかったですがセッション自体はこの2人の組合せとしては可もなく不可もなく。

十島NANI × Greg Fox (from Guardian Alien)

ライブ告知から七尾旅人が煽りまくってたスゴドラマー2人のセッション。


とにかく音と音の感覚が小さい細かいビートの応酬。
たしかに恐ろしいドラミングテクニックなんだけど……お互いが遠慮して化学反応が起こるまではいかなかった、かなぁって印象。
七尾旅人は故郷・高知よさこいの鳴子で乱入。あまりプラスにはなってなかった?


2セット目。
Gregに”もっとビートを外す感じで”と要望してみるもうまく伝わらずに1セット目と同じようなセッションに。
七尾旅人は今度はよさこい節(風)なボーカルで乱入。それに反応してNANIさん似たような歌で応える。こういったポジティブな胡散臭さはNANIさんの得意とするところですね。


Greg × NANIさんは爆発するラインまで煮えきることがなく終わってしまった印象を受けました。

GREG × 山本精一

山本さんはさっきキレ気味だったから戻ってくるかなぁと心配でしたが、案外すんなりと登場。


1セット目は山本さん×NANIさんのセッションに近い感じ。


2セット目はGREGがボアダムスファンなことへのサービスか、山本さんがドゥームメタルみたな重くて凶々しいボアダムス風フレーズを弾いてました。かっこええなぁ。


音量小さくて不機嫌そうだったわりには何度もステージに登場してGregへのサービスも忘れない……ツンデレか!?

GUARDIAN AIEN

Greg FoxとAlex Drewchinという女性メンバーの2人構成。ライブによってメンバー編成は変わるそうです。
Alexは声とエレクトロニクスを担当。スタイルから顔ルックスまでめっちゃ綺麗。文句無しの美人でした。


Alexのテクノ的な電子音にGregの細かいドラムビート。暴力的にならずにフツフツと静かに踊らせる。噴火する前のマグマみたいな、パワーは確実に保有してるけどイタズラに噴火させない…そんな独特なサウンド。
めちゃくちゃ良かったです!オサレでもあるしプリミティブでもある。


勝手に暴力的なマスロック的バンドかと思ってたらとても知的なバンドでした。こりゃ素晴らしいバンドだー。

BIOMAN × Alex Drewchin × 七尾旅人

BIOMANが(農業のため)先に帰らないといけないのでさよならアクト。


BIOMANがかける感動的なピアノ曲にALEXと七尾旅人の声合わさる。ふたりとも超美声。とくにALEXの美声にはあの場の誰もが驚いたと思います。一番綺麗な声が出てるとときの七尾旅人のあとに、質感の似た同レベルの美声がまた聴こえてくるんだもの。
これも素晴らしいセッションでした。

全員セッション

BIOMANとSeihoさんを除く全員でセッション。


山本さんはGUARDIAN ALIENに向けて特大の拍手をしながら登場。どうやら気に入ったみたい。
彼らのサウンドに寄せる形で、ノイズを封印してNEU!やマニュエル・ゴッチンのようなミニマルで幸福感のあるギターを弾いてました。


GUARDIAN ALIENは彼らの音を奏で、NANIさんが手数の多さ+時にパワフルなドラミングでより重圧に仕立て上げる。音だけでなくNANIさんの人懐っこい笑顔も空気をハッピーにするのに一役買ってる。
NEU!のライブみたいなズンズンズンと進んでいく気持ちよさ。リズムを伴いながら昇天される。極楽〜。


山本さんは全体の音がどれだけ盛り上がってもガーッと弾くことは一切せずとにかくNEU的なギターを続けてました。それがGuandian Alienの最大のリスペクトなのかな、と思いました。でもかなりテンション上がってるみたい。(後述の行動から)


今回のメインゲストであるGuardian Alienの音を全員が理解して一丸となって高め合ったことで、心から素晴らしいと言えるセッションを展開していました。
どこまでも登っていけそうな気持ちいいセッションはいつまでも続いて欲しいと思いました。


優しいアッパー感にのなか、七尾旅人はトランスしてたようで、スピーカーに登って危ない体制で叫び続けてました。かなりキテる状態。
それにむけて特大のピース*2をかまして退場する山本さん。さっきまで不機嫌そうだったのにいきなり上機嫌だなぁ;

七尾旅人

全員セッションのあと一曲だけ。新曲の「誰も知らない」。ライブの常連だというちっちゃい女の娘にiphone(歌詞)を持ってもらって演奏。
セッションで叫び続けたため声はかすれてる。お客さんのコーラスにも助けられながら歌い終えました。声が出ないので裏声を地声に戻して歌ったりしてたのですが、その対比が素の歌声を聴けたような気がしてよかったです。

Seiho

”このあと何もいらない”みたいなしっとりムードの後にイベントを締める大役を任されたSeihoさん。
ゆったり気味のトラックで見事に難しい役をこなしてました。

番外編

終演後。七尾旅人が片付けながら軽く2、3曲歌い、そのあと山本さんとダラダラ会話してるのを結構な人数の客が聴いてました。基本オフレコな内容。あの伝説の黒ストラトのネックの先が折れたという大ニュースが。ポッキリいっちゃってるみたいでしたけど…どうなるんだー!!??

最後の最後に歌った「Memory Lane」が素敵でした。声はかすれて歌いにくそう。でも最後は魂のこもったシャウトを疲労。
大阪は百人組手の発想元となるイベントが行われてただとか、今回のイベント動員がうまくいかないとか特別な想いがあったみたい。七尾旅人なりの客、出演者、関係者への感謝の示し方。それがあの全力でのシャウトだったのかな、と思いました。




BIOMANの奇妙なDJに始まり、どこか淡々としたフロア/ステージもしくは出演者/出演者が一体化できないまま進行してどうなるかと思いましたが、Guardian Alienのライブを境にグッとよくなって最終的に素晴らしい全員セッションへと結びついた。この日の核はやはりGuardian Alienだったのかな、と。
決してすべてがスムーズに行ったわけじゃないけど、それも込みでドラマ/物語があった一夜でした。イベント全体の流れがひとつの即興セッションだったのかもしれません。


今回は七尾旅人 vs ◯◯ってなムードは薄かったです。イベント名通りに番外編で想像してた百人組手とは少し違いました。
ぜひ本家百人組手も関西に上陸してほしいな!


*1:ROVOの化け物サウンドに声だけで1人挑む七尾旅人は感動ですらあります https://www.youtube.com/watch?v=bTgXVeFvebY

*2:ウワサの先日のMOSTのピースもあんな感じだったのかな?