soundwing-あの素晴らしい駄文以下のなにか

関西(大阪)のライブレポートを中心に更新。昔はフリーゲームや同人音楽のレビューをしてました。

2017/05/25 Fernando Kabusacki、山本精一、EXPE、西 滝太、砂十島NANI @ CONPASS

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アルゼンチン音響派の至宝、フェルナンド・カブサッキの大阪ライブ。毎年日本の各所で色んな人達とセッションして”今年は誰とだ、何処でだ”と楽しみにしています。
2017年の大阪は山本精一さん、EXPEさん、西さんのPARAな方々+
十島NANIさん。今年も最高の即興ライブでした


CONPASSで珍しくイスあり。てか初?ロビーのソファなので座り心地よい。
司会役の山本さんがずっとニコニコしてて一番楽しみにしてるなぁ。


全部で4セット。

Fernando Kabusacki + 西 滝太 + 砂十島NANI

まずはカブサッキ+西さん+NANIさん。


アンビエント
マニュエル・ゲッチング
シネマティック
ロック
シネマ
ドラムン(!!)
ロックンロール(!)
暗いシネマ
……と色んなタイプの音が次々と。
NANIさんの細かいドラムに合わせてカブサッキがドラムン的な音少なめギターを入れてきたのは驚いた。


LUCKのジャケの森林の中にいるような、深海の中にいるような現実味ある幻想的なイメージの音でした。シネマティックに派手になるとこは、森に巨獣が現れたような威厳があったり、ロックンロールはF1レース的な趣もあったり……。面白い!


カブサッキと西さんは両者とも色んな音で即座に相手に合わせられるので相性バツグン。
既存曲のような完成度で進んでいきました。そこに寄り添うNANIさんの細かめなドラムが良い味だしてた!



1部は2セット。
カブサッキ×西さん×NANIさんの意外なトリオ。優しくもスピード感のあるセッション。
カブサッキ×EXPEさん、途中から西さん。魔法のような煌めくギターの応酬。
どちらも素晴らしい演奏。

Fernando Kabusacki + EXPE (+西 滝太)

2セット目はカブサッキ×EXPEのギターコラボ。


ギターから聴こえてくるとは思えないアンビエントドローンで始まり、意外にもカブサッキが先にファンクなリズムを入れダンサブルなノリに。EXPEさんもアコギのタッピングで反応。足のスイッチでハイハットの音を出してました。


ノリの良い展開が終わるとシネマティックな演奏に。カブサッキがキュキュウと動物の鳴き声のような音を出してるのが生理的に気持ちよかった。
そのままストリングスを引き連れているようなクラシカルな演奏へ。西さんが途中参加してドローンで加わりそのまま終了。

Fernando Kabusacki + 山本精一 + EXPE + 西 滝太 + 砂十島NANI

3セット目はまず山本さんとカブサッキのデュオ。


入りは山本さんがよくやるクラシカルなプログレ風ギター。カブサッキは合わせながらも少しづつファンクでブラックなノリを入れていく。
山本さんもブラックなプレイにシフト。音はテキサス/ニューオリンズな感じだけども音色がエフェクト/ディレイかましまくり。ファジーな音のでさながら深海ファンクのジャム。どちらのイメージにもないノリだったので意外だった。そしてめっさカッコ良かった~。


そこからEXPE、NANI、西の順番に加わる。全員がリズムを刻みがち、かつ変則的なリズムを刻むのでちょっとごちゃっとしてました。
西さんや山本さんがベースにまわったり、西さんがパーカスにまわったりするものの……まとまらず。みんな自己主張強いし、全員がリズムもベースもリードもできるから基本シッチャカメッチャカ(笑)


カブサッキは様子を見て基準のフレーズを入れようとするもすぐに誰かが崩してしまう状況が10分ほど続きました。
一度CISCOみたいに2つのリズムが共存してカッコええってなる瞬間もあったけど基本はゴチャっと;
こういう時にとんでもない素晴らしい演奏になるときもあるだろうけど今回は混沌としたままだったかな?


しばらくして一度リセット。全員がほぼ音を止めて、カブサッキのシンプルなリズムギターに合わせてみんなでジワジワとトランシーに盛り上げていく。ここからはかっこよくてなんとか持ち返した感じです。


トランシーに盛り上がっていくなかで、カブサッキがかわいらしいループを作ったりしてるのが面白かった。
最後に少しづつ音を消していって、山本さんのギターで終わるかな?と思いきやカブサッキが最後に1音鳴らして終了。メインが終わらすのになんかほっこり。


混沌としてたけどスリリングで、”お!”となるフレーズも短い間隔ではいっぱいあった。なんだかんだでかなり楽しめた全員セッションでした。

Fernando Kabusacki solo

アンコールはカブサッキのソロ。これが本っっっ当に素晴らしかった。


最初は不穏なコード進行でスタート。
電子メトロノームを鳴らしてそこにルーパーでどんどんと音を重ねていく。南国っぽいかわいらしくフレーズを中心に次々と音が増えていく。


ループの上でリードを弾いてるのかな?と思ったらそれが自然にループに取り込まれていく。気づいたらシャングリラが見えてきそうな幸福なハーモニーに。あまりのスゴさに涙が出そうになりました。
エモいとか悲しいとかシアワセとかの前にスゴすぎて涙が出る。


築き上げた幸福なループの音量が小さくなっていき、最初の不穏なコードが戻ってくる。シアワセが遠ざかっていく音の風景はとても儚く映画的でありました。
不穏に終わってしまうのかな?と思ったら一度音が止まってから、希望ある旋律を奏でてハッピーエンドに終了。素晴らしい!!!


僕が人生で一番衝撃を受けた即興が'13年のシャングリラでのカブサッキのソロ。それに匹敵するぐらい今回のソロも素晴らしかった!
シャングリラのソロはシアワセ→波と警報のようなノイズの流れでした。3.11から2年、記憶が薄れてきた日本人に向けてアルゼンチンからメッセージにも思えました。


今年はシアワセで覆い尽くすかと思いきやソレが遠ざかってく喪失感。でも最後には希望。ここのメッセージは日本人として考える意味はあるんじゃないかなと。



PARAメンバーが多いから既視感のある演奏になるかなーと思ったけどNANIさん、そしてPARAのルールから解き放たれたことで新鮮味にある刺激的なセッションになりました。


カブサッキの演奏は本当に面白い。どう加わってくるのか?とずっと気になる。今回は意外とロックに切り込むのはカブサッキが多かった気がします。
極めつけはソロの素晴らしさ。そしてカブサッキの笑顔が本当にステキなんだよなぁ。