soundwing-あの素晴らしい駄文以下のなにか

関西(大阪)のライブレポートを中心に更新。昔はフリーゲームや同人音楽のレビューをしてました。

SUBHUMAN / 3x6


コア&ダークなコンポーザーの面々が集まった『serial experiments lain』イメージアルバム。


ダークステップ、IDM、インダストリアル、暗い歌モノにエレクトロニカ、とダークサイドなサウンドが揃っております。
でも、不思議とジメジメした陰湿さは感じない。重い空気が充満してるのに聴き難さがほとんどありません。そこが今作の魅力。
lain」といえば、複雑なプロット構成と(スチームパンク/ジャンク・イズムに頼らない)病んだ世界観でありながら、奇妙な取っ付きやすさが魅力のアニメですが、このCDで鳴らされている音はまさに同様のモノ。
つい触れたくなる危ない世界。


淡々としたビートにオドロオドロしいウワモノの曲があれば、強烈なブレイクビーツの曲もあり、悲しいピアノが奏でられる曲もある。
楽曲のレベルはかなり高く、攻撃的な楽曲もダウナーな楽曲も良いバランスで入っています。リズムの効いている曲が多いのが私好み。


SUBVERSIVE』のような衝撃や『SUBLIMINAL』ほどの圧倒的な闇成分は無いものの、トータルなバランスが非常に良い一枚で末永く聴いていけそうです。

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①Disorder Circulationのgrayさんによるのっそりとしたダブ/エレクトロニカ。階段を登ってるのか、フワフワと浮いてるのかわからなくなる不安定なトリップ感。ジワジワと音を重ねる。ビートをカットするタイミングや随所に挟み込まれるSEが良い味だしてます。


②くっつり会さんによるダークなアブストラクト・ヒップホップ。HARD GU-C.Iさんのラップとナコさんの歌付き。サビはOPのメロディを借用。
美しくもダウナーなピアノのトラックに乗せて繰り出されるラップは、作中のキーワードやOPの和訳歌詞へのリンクを大量に挟み込みながら無駄な単語が少ない素晴らしいリリックで感動しました。『わからないのね 残念だわ』のパンチラインは強烈!
3:14から破壊的なブレイクビーツが挟み込まれラップが激しくなるのがむちゃくちゃカッコイイ。


③3×6さんお得意のダークステップ。ビープ音とブレイクビーツの応酬。文句無しのエグさです。約4分半の間ひたすら繰り返されるリズムが4:50で崩される瞬間が最高にエクスタシー。


④インダストリアル meets インテリジェンス・テクノ。工業的な機械音と淡々としたキックが絡みあう。引きこまれます。


squarepusher的なIDM。変態なベース。癖にあるリズム。声ネタが廻り次第に混沌としてくる。とてもlainらしい一曲。


⑥3×6さんのもう一つの顔・clichexxxによる歌モノのインダストリアル/ニューウェイブ。荒いギターが”らしい”。サビのメロが好き。


⑦binariaのyoshihisa nagaoさんによる音数を絞ったストイックなミニマル。リズムが生み出すリラックス感とトリップ感は、日常の音がいつしか反復音楽に聴こえてきた、ってな感覚へとつながっていきます。ある意味今作で一番のドラッグミュージック。


⑧ginreiさんによるムーディーな一曲。オリエンタルなフレーズを聴くと「ここにきて初めて一般受けしそうな曲がでてきた〜」と安心します。でもCDの雰囲気からはまったく外れてないバランスの良さ。


ダブステップ/インダストリアル。作中のセリフをサンプリングしたダークなトラック。メタルパーカッションがむちゃくちゃ気持ちいい!イントロでゆら〜りと体を揺らしてたら、激しくなるリズムに合わせていつのまにか狂ったように頭を振ってしまいます。今作で一番のお気に入りかも。


⑩深水チエさんをフューチャーした歌モノ・ダークポップス。物悲しい旋律がCDの曲順にうまくハマってます。中盤のドラムンパートがカッコイイ。


⑪KPDrecordsのkanabunさんによるIDM。リズムが完全にぐちゃぐちゃになるのは意外とこの曲だけかも。


⑫3×6さんによるダークステップ寄りのダブ。地の底から聴こえるような暗黒ベースがたまらない。音のクオリティがたけぇ!


⑬ダーク・アンビエント→オペラティックなボーカルを乗せたアンビエントへ。アルバムの最後に持ってくるにはちょっとダレがちかなぁ〜というのところもあります。


⑭ボートラは原作のようにオーガニックに。

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洗練されたインダストリアル/IDMが作り出すlainの世界。
鋭い音で満たされた知的なシーケンス。非日常なおかしさの中に含まれる病的なまでの「整」と「静」。
「アブノーマルなのに怖いくらいに整ってる」というのが今作で一番「lain」を感じた部分でした。


音楽的にはIDM・インダストリアル・ダークアンビエント、世界観的にはサイバーパンクジャパニメーションに惹かれる人なら楽しめるであろう一枚です。オススメ!