soundwing-あの素晴らしい駄文以下のなにか

関西(大阪)のライブレポートを中心に更新。昔はフリーゲームや同人音楽のレビューをしてました。

2011/04/27 フェルナンド・カブサッキ OSAKA SESSION(山本精一、OORUTAICHI、YTAMO、カメイナホコ、西滝太、渡邊みつる) @ 梅田シャングリラ

アルゼンチン音響派の代表格フェルナンド・カブサッキのライブに行ってきましたー。
カブサッキは数作のゲスト参加しか聴いたことなかったけど、迎える日本のメンバーが豪華なので行くことにしました。


仕事を定時に終えて、梅田シャングリラへダッシュ。開演ギリギリに到着!
フロア内の客層をざっと見渡すと意外にも年齢層が高い。40代のおば…女性も数人いた?でもヒッピーファッションだったりで納得。
また意外にも人が少ない。最終的に100人くらいだった気がします。スペース余ってるということで急遽スタンディングからイスありに変更。


まずはカブサッキと山本精一のギターデュオ。
今日の山本精一は黒いシャツにスーツでビシッと決めての大人の山本精一
山本精一の「こんばんは」の一言からスタート。
流れるように運指を動かしてクラシカルにフレーズを奏でる山本と音響派らしくエフェクトをかけた綺麗な音を重ねていくカブサッキ。いきなり引き込まれる美しさ。


10分ほどでオオルタイチ、渡邊みつる(dr)が参加して4人体勢に。
この日のオオルタイチはギター、サンプラー、エフェクトボイスと楽器を次々に切り替えての演奏。かさ小僧みたいに髪を下ろしてて、アー写で見るよりえらくイケメンに見えました。
フレーズの粒の重なりから徐々に盛り上げていく。カブサッキの高速ストロークを合図にノイジーに。
カブサッキはとにかくギターのタッチが優しい。高速で手が動いてても羽でギターを撫でているかのような繊細なタッチ&音で惚れ惚れとしました。


カブサッキを残した3人がステージを退場して、交代でYTAMO(ウリチパン郡)、カメイナホコ(ウリチパン郡)、西滝太(PARA)のキーボード3人+カブサッキという構成へ。静かで神聖な空気のセッション。
西さんはPARAではベースシンセと地味な役柄ですが、この日は派手なプレイで全体を引っ張ってました。デジタルオルガン風のシンセで高みへと上げていく。
女性コーラスが入ってきた後半が美しかった。


一部が終了し、20分ほどの休憩後第二部スタート。


二部は初めから全員でのセッション。
最初は全員がうまく噛み合わず、発展するフレーズを探しては誰かが外れて……を繰り返す。音を少しでも強く出すと全体の音が乱れてしまうPAの問題もあったのかもしれません。各々の個性が見えていた第一部に比べて散漫としていて面白みが弱い……。
微妙な空気に切りこんだのがカブサッキ。ジャズサックスの音をギターで奏で、雰囲気をジャジーに。
そのままギターによる熱いサックスソロ!ギターから出る音とは思えない熱狂的なプレイに、汗を振り乱して吹きまくるサックスプレイヤーの幻覚が本当に見えた!呼応するかのように山本精一もギターを掻きむしり、ドラム、キーボードも盛り上がっていく。微妙に手持ち無沙汰なオオルタイチw。
この日のハイライトシーンのひとつでした。
さらに、山本精一の合図ひとつで全員音を止めてると同時にリズムマシーンがビートを刻み始めるというスゴ技も披露。即興でコレはすげぇ……。


再度フレーズの探りあい。ここでもまたカブサッキがテンポの良いギターフレーズで引っ張っていく。
山本精一も美しいギターノイズで答える。先程の熱狂的な盛り上がりとは違ってクールな盛り上がりで終了。


とりあえず本編は終わり。
当然起こるアンコールに答えて出てきたのはカブサッキと山本精一
と思ったら山本精一が「カブサッキは滅多にソロをしません。でも無理矢理やらせます。相当レアですよ。」とのMC。あんな楽しみで仕方がない顔をしてる山本精一ははじめてだ。
「あ、(今回の来日ツアーの)酒游舘でもやったか」とすぐにレア度を減らすのが彼らしい。


で、このソロが素晴らしかった。
最初は可愛らしいシロフォンのフレーズ(もちろん発生源はギター)をループマシンでループさせ、そこにギターの音色を加えていく。
クーラーの音が気になるほど、とても静かな音世界にどんどん引きこまれていく。次第にギターノイズを加えてブツっと音が途切れる。
しばらく無音の中でカチカチとエフェクターを切り替える音だけが響く。
そして、次の瞬間に産まれた音色が今まで聴いたことがないぐらい心地良い音で心を奪われました。
わずか一小節のフレーズなのに、まるで作りこまれたトラックのように感じる。雨季が上がって日差しが挿し込むジャングルの風景が目に浮かぶような美しいワンフレーズがリピートしていく。
客席から思わず漏れ出る「すごい……」の声。奇跡のような一瞬でした。
シンセやサンプラーを使わず、ギター一本だけとは思えない様々な音が詰まったソロ。良いモノ見れた!


ソロで終わりかなーと誰もが思ったなか、なかなか明るくならない照明。ダメ元で始まるアンコールの手拍子。
そしたらまさかの全員出てきてのダブルアンコール!
山本精一曰く「今ので終わりでいいと思うんですけど、カブサッキがやりたいというんで」。
ソロやってくれるはダブルアンコールあるはでカブサッキが上機嫌だなぁ。ライブ中まったく触れないから忘れそうだったけど、今の状況の日本に地球の裏側からやってきて全国10箇所でライブしてくれてるんだよなぁ、と思うと……。


このダブルアンコールがまた最高。
カブサッキのギターループを軸とした疾走感溢れるセッション。
全員の肩の力が良い意味で抜けたアンサンブル。第二部よりはるかに全体のバランスが良かったです。
今まで変則的だったドラムもストレートなドラムン系フレーズを叩いてて土台がしっかりしてた。オオルタイチはエフェクトボイスに徹底してそれがまた絶妙な味付けに。
全パートが終盤に向けて昇りつめていき終わるかな、と思ったらカブサッキが唐突に牧草的なメロディを紡ぐ。
それに答えるキーボード。カズーも入る、山本精一もギターで答える、微妙に戸惑うドラムw
幸福なメロディが幾十にも重なりピースフルな世界が構築される様子に思わず涙が溢れてきそうになりました。
セッションを締めるためにフレーズ分散していくけど、皆終わり方がわからないで戸惑いながら弾くのが面白かった。カブサッキと山本精一が思わず顔を見合わせて苦笑いw
と、思ったらまた一新したフレーズを入れていくるカブサッキ。終わる気ゼロな本日のメインに山本精一も思わず苦笑い。
オオルタイチがUFOのSEを強引に入れて、カブサッキがUFOを探る仕草をするよくわからない終わり方。
あれだけの強烈なステージを見せてラストをコミカルに締めるってのがまた和やかな雰囲気で良かった〜。


素晴らしいライブでした!
ここ数年で見た即興系ライブの中でも1,2位を争う素晴らしさ。特にアンコール以降は至福の時間でした。
なにより何時までも楽しそうに演奏を続けようとするカブサッキの人柄に惚れました。


終演後にカブサッキの楽譜代を見ると「3-35 SAX 2-38 AIR ……」とエフェクターのセッティングメモがズラーと書いてある。
普通のギターのフレーズも極上なのに加え、ギター外の音を作り出して演奏してしまう素晴らしいプレイに一発でファンになりました。


6月から山篭り宣言をしてる山本精一を見れるのはまだROVOの大阪公演があるけど、「山本精一」として見れるのはこれがラストかもしれない。
山本精一のプレイをたっぷり堪能できて大満足〜。


DIY HEARTSでフェルナンド・カブサッキROVO勝井祐二益子樹、迫田悠の音源が配信されてます。必聴!
http://www.diystars.net/hearts/release.html