soundwing-あの素晴らしい駄文以下のなにか

関西(大阪)のライブレポートを中心に更新。昔はフリーゲームや同人音楽のレビューをしてました。

2011/07/08 AKRON/FAMILY @ 十三ファンダンゴ

サイケデリックなフォークを展開するakron/familyのライブに行ってきました。CDでは比較的おとなしいけどライブがとにかくすごいと聞いていたので楽しみにしていたライブです。



仕事帰りにファンダンゴに向かうと既に前座バンドがスタートしてた。

森雄大(neco眠る)organized session《和田シンジ(DMBQ/巨人ゆえにデカイ)/中林キララ(オシリペンペンズ)/栗原ペダル(NEW MANUKE/EXEDEXEX)/BIOMAN(neco眠る)》

NECO眠るの森さんがオーガナイズした即興ジャム・バンド。メンバーは上に書いてある通り関西系のバンドからの選りすぐり。森さん自体は出演せず後ろの方で眺めてました。


元バンドでの立ち位置を知ってる人にわかるだろうけど一筋縄じゃいかない人たちばかり。全員笑顔をほとんど見せずにどこかすれたオーラで演奏。独特の空気だ……。
すごいのはやはりキララさん。
ペンペンズより幾分かストレートなロックギターで同じ人間とは思えない奇天烈な動きが強烈。


一人一人に自然と役割ができているのが面白い。奇抜なフレーズでサウンドの”色”となる部分を奏でるキララさん、勝手に”BPM”を変えていく和田シンジのドラム、ギターよりエフェクターを弄って全体の”合図”となるSEをいれることが多い栗原ペダル、で、面白いのがBIOMANのキーボードで、本当に”味付け”程度にしか音を挟まない。8ビートの二回目のスネアにだけインダストリアルなサウンドを入れるとか超控えめなんだけど妙に印象に耳が向く音を挟みこんでくる。


即興バンドとしては、出方を伺う場面が多かったり、展開をうまく拾えなかったり、で最高とは言えない。
けど、それぞれは一級品。一定間隔で鳴るキーボードからスタートする攻撃的なジャム、一気に盛り上がる爆音といった見せ場はしっかりとあった。なかなか面白かったです。

AKRON/FAMILY


そして今日の主役・AKRON/FAMILY。


サウンドチェックをしてたメンバーが、会場BGMが流れているのもおかまいなしにフラっと打楽器アンサンブルをスタート。いつのまにか始まってると気付いて「おぉ」とざわめく会場。そのまま綺麗でドローンな曲でフワフワとした心地に持っていく。もっさいルックスのおっさん三人から発せられているとは思えないコーラスが美しい。
トライバルなドラム、フィードバックするギター、ベーシストはシンセやらが積まれた卓上前でペンで書く音やコインをこする音で色々な音を重ねていく。


フォーク、トライバル、ニカといったニューフォーク色はもとより、想像以上に現代音楽/実験音楽の要素があります。上にあげた小物や、ドローンシンセ。マイクを咥えてシンセいじる姿はスロッビンググリッスルを連想させるとこもあります。
それでいて客へのアプローチが多い最高のエンターテイメント・ショウ。踊らせたり、手拍子を煽ったりととにかく一緒に盛り上がろうとする姿勢がすごい。なによりステージ上にいる3人の表情が本気で「ライブ」を楽しんでる。こっちも楽しくなってくるぐらいに。
音を本気で追求しながらも、とにかく音楽で楽しもうとする最高のライブバンドです。
CD通りに演奏する曲はほぼ無し。予想をはるかに超えるジャムっぷり。どの曲も大きく発展させていくので一曲5〜8分とかが基本。
MCで「We are just part of band.Every one of you are the band」と言ってたけど本当にそれを現実のモノにしちゃう怪物みたいなバンド!


セットリストも常にクライマックスってぐらいに盛り上げてくる。
なんたって2曲目でいきなり名曲の「RIVER」!手拍子を煽ってから牧草的な最高級メロディ。彼らの中で一番好きな曲で「前作の曲だからやってくれるかなぁ」という不安は一気に吹き飛びました。幸せ〜。


次の「Island」では通訳を通して謎の横揺れダンスを教えてくれる。指を立てた右手を上空に掲げ集団で横に揺れる奇妙な空間。おかしさと気持よさが同居。ちなみに、通訳が「image you are rich」「目の前には美しい風景が広がっています」などと全然違ってて笑ったw


えらくノイジーにアレンジされた「A AAA O A WAY → SO IT GOES」を挟んで5曲目「another sky」。ここがバンドもフロアも本気で火がついたところであり、この日一番のハイライト。
もちろん曲本編も良いんだけど、CDだとラスト20秒だけ聴けるコーラスをみんなでひたすらシンガロング!
歌声と手拍子が充満してさながらサッカースタジアム状態!さらにフロント二人がフロアに降りてきてフロアの波へと突っ込み、置いてあるテーブルを叩いたり、肩車したりと大熱狂が10分くらい続く。ファンダンゴがものすごい笑顔に包まれた瞬間。歌と手拍子だけでここまで盛り上がったライブはそうないです。思い出すだけでも逝っちゃいそうな至福の時間でした。


そこからはもう盛り上がりまくって曲順とか全然覚えてない。
「everyone is guilty」のイントロが入ってきたの高揚感、「Silly bears」のサイケデリックな躍動感、と陽の音楽に翻弄されまくり。左前列エリアが妙にハードコアなノリでノリが近い自分は余計テンションあがった〜。


「Silly bears」が終わるとステージを降りることもなくアンコールへ突入。
ここで前座でドラムを叩いてた和田シンジ登場。「fuji 2」をバックに、ドヤ顔でシェイカーを振ったり、似非ラップを入れたり、ベース弾いたりマイクスタンドを振り回して叫んだり、勝手にAKRONメンバーのi-phoneを客に渡したりとやりたい放題。
ただ本職はドラムであって魅力はさほど……。
AKRONは楽しさ100%のバンドだけどアホなノリではない。そこに和田シンジの悪ふざけがうまく噛み合わなかったような印象です。ちょっと盛り下がっちゃった?AKRON側も最初は合わせてたけども途中からうまく乗りきれず。
ただ散々好き勝手やりながら最後は「AKRON!!!」とコールしてメインを立てて退場していったのはちょっと熱かった。


大ラスは美しく聴かせる「LIGHT EMERGES」。この曲はメインボーカルがドラムでまた最高にきれいな歌声でグッときた。


本編の盛り上がりに反して、アンコはどうもパッとしないまま終わったところもある。
個人的に和田シンジとのセッションで滑った印象。「"We" are the one band」の負の面が出てしまったのかも。
でもこういうリスクある冒険をやるからこそ、あれだけスリルと熱気のあるライブをできるのかもしれない。


本当に楽しかった!今年のベストライブ候補〜。
CDでのゆったりとした印象とは全然違う。会場全体でオーラを創り上げて盛り上げまくる最高のライブバンドです。
「演奏するバンドと盛り上がる客」というより「大騒ぎするライブハウスの中でたまたま音を奏でてた3人」という感じ。忘れられないライブになりました。