soundwing-あの素晴らしい駄文以下のなにか

関西(大阪)のライブレポートを中心に更新。昔はフリーゲームや同人音楽のレビューをしてました。

2012/02/18 Room(環ROY / dry river string / Llama / MaNHATTAN / middle9) @ Pangea

Middle9ってバンド主催のイベント。MaNHATTAN、環ROY狙いで行ってきました。


最初はメンツのわりにあんまり客が入ってなかった。ちょこちょこ増えてきて最終的には100人くらい入ってたのかな?
告知の仕方とかでなんとなく予想してましたがうっすらと感じる身内臭。う〜ん、Pangeaってハコの空気のせいも多少はあるかもだけど……。

LLama

ギターボーカル、ウッドベース、ツインドラム、二人の管楽器(たまにキーボード)の個性的な編成。
ニカ、音響派を経由した浮遊感あるサウンド。ボーカルありで文学系ポストロックを思わせるとこも。


細かいフレーズでびっしり詰まってるツインドラムのセンスはけっこうなもの。また管楽器を有効に使ったグローネス*1も気持ちいい。この手の音のボーカルにしては優男顔じゃなく髭のシブイ顔なのが印象に残ってます。
個人個人のセンスはめちゃくちゃ良い。けどバンド全体での化学反応的なモノは弱かったかなぁ。最後の曲は長髪のドラムがぶっ叩いてて良かった。

MaNHATTAN

赤犬のドラム + The Miceteethのキーボード&シンセサイザー(元ボーカル)。


この人達の音楽はホント面白い!独特のダブ感覚で”要素の抜き方”がめちゃくちゃ上手いです。
「このリズムにこの音を落としたらどうなるかな?」っていう実験……いや理科の自由研究を眺めてるみたいな感覚に陥ります。


SATURNのサブステージの時は見えなかったドラムが今回はばっしり見えました。身体、スティック、リズムがドラムセットの上を跳ねまわってて凄かった……。ニッコリしながら他のメンバーを見つめる表情もプリティ。
キーボードのテクニックは凄いし、シンセのエフェクターやルーパーを使って色々な音を繰り出してくるのが見てて聴いてて楽しい。


演奏した6曲それぞれに色々なアイディアが詰まってて音的好奇心を刺激されまくりでした。『GELO』のブレイク部分(?)は最高にカッコよかったです。
いま一番面白いことやってるバンドはMaNHATTANで間違いない!


middle9

Tortoise系列のポストロック拡張系。ジャズ、ロックやファンクに歩み寄りながらのオサレ&シリウスなサウンド。
これも1組目と一緒で要素のひとつひとつはイカすけど、いまいちピンとくるものが無かったかなぁ。
メロディや音像がぼやけた感じなのが趣味から外れたかも。
ど真ん中にドンと置かれた大型キーボード+ヴィブラフォンが佇まいのわりには音的にあまり目立たなかったのも残念。


dry river string

3アコギ+キーボードのアコースティックな歌モノバンド。toeとのレーベルメイトだそうです。


イベントオープン時からフロアに熊のようにごつい人がいたのですが、このバンドのメンバーでした。その風貌から想像もできない繊細なギターを奏でて驚いた。そのミスマッチに惹かれてこの人に視線を持って行かれてました。


音を絞りまくった繊細なサウンド。ゆらゆら揺れてると気持いい〜。洋楽フォーク系のメロディ&美声もナイス。
1組目のバンドからやってきたサポートドラムも良かったしなかなか楽しめました。


環ROY

ドリーミーなトラックに合わせて個性的なフロウを乗せるラッパー・環ROYがラスト。


一発目から名曲『Break boy in the dream feat. 七尾旅人』。水を得た魚のようにトラックの上を滑っていくラップスキルが気持ちよすぎる。動きもPVやライブ映像そのまま。かっこええ……。しかも七尾旅人パートに合わせてた歌も普通にうまい。
『みえないモノ』と続き『任務遂行』『go!today』『蒼い日』『伝』『きっと一緒』『GOD ONLY KNOWS』と3rdを中心に良曲ラッシュ。一人だと広いステージの上を飄々と泳いでいく。


しかし、客はどうも反応がイマイチ。楽しめていないのではなく、ヒップホップのライブにどう対応していいかわからなかったところがあった気がする。
なんかフロアとステージの間で緊張感が。環ROYも微妙な反応をしめす場面が幾度か。ステージ前に座り込んで長時間うつむいてた『Ms.Solitude』のアウトロはカッコイイパフォーマンスでもあるし別の意味でも捉えてしまう……。


そして『街並み』。
「そっちはどう?」のふりに「……(しーん)」としてしまうオーディエンス。「こっちはどう?」「……」、いや、反応しにくいフリだけどね。さらに強まる緊張感。
そのままトラックなしでバース2をアカペラ。

「みんなが見えないフリする 道端の人影みたいにね」
「このコントラスト どうやって受け止めていいのかわからなくなる」
「誰もが頷く説教が 出来るならカマしたいさ」

そしてフックの

「解決策以外の言葉じゃ 意味がないっていうならば このラップは無意味だな」

言葉がグサグサと突き刺ささりました。この曲に書かれた言葉の内容が、だけじゃない。そもそもリリックは別の事について歌ってるモノだし。その言葉を”いま、ここ”で命を宿らせる環ROY表現者としての力に感銘をうけました。


放心状態にされた状態に名曲『ハッピーバースデー』をブチこまれて終了。大好きな「理解できないのか しようとしてないのか オレは後者か?」のパンチラインがいつも以上に響いた。


物販でちょこっとだけ話した環ROYは斜めに構えたキャラ。体育座りで「買ってくれよ」。イメージそのまま。でもしっかりと握手してくれた。アンビエントのMIXCD気持ちええっす。


純粋に楽しめたってのはMaNHATTANが一番良かった。でも印象に残ってるのは環ROYだなぁ。
ライブはいっぱい行ってるけど今回の環ROYの「ラップを今という空間で生かす」という新しい体験ができました。まだまだ奥が深いです。端が見えないです。


予想外のバンドに会えて衝撃を受けるってのはなかったかも。良かったけどあと一歩……。
同イベントが5月に服部緑地野外音楽堂でイベント開くらしいです。あそこでこの手のバンドを聴けると思うと高まってくる。
ただイベントとしてはすこし苦手な空気だったからなぁ。とりあえずは出演者の発表待ちー。


P.S.
環ROYの時は最前列にいたから客の反応はほとんど歓声で判断してるので、本当に悪かったのかは断言できません。環ROYがどういう思惑であれらのパフォーマンスをしたのかも本人しかわからない。ただ自分は今回のレポのように感じました。

*1:グローファイ的なドリーミーな感覚?