soundwing-あの素晴らしい駄文以下のなにか

関西(大阪)のライブレポートを中心に更新。昔はフリーゲームや同人音楽のレビューをしてました。

ONLINER INFINITIA / Rising Sun Nova


過去作「ONLINER」と「ONLINER RELOADED」に続くONLINERシリーズ第三弾。ONLINERのリミックスと新曲を収録。
ほぼノンストップのDJMIX形式でアルバムは進行します。


初期はメロディアスなテクノが得意だったRazunaさんですが、今作はここ数作の路線であるリズム重視のテクノ。メロディ要素は少ないです。


反復につぐ反復の曲構成で、一曲がほぼワンフレーズというのも少なくない。全体的に暗い空気が漂っており、かなりコアな作風。
最初の印象は、今までのONLINERのようなコンセプトアルバムではなく、単曲単曲のテクノ方面にシフトしたアルバムに聴こえ、あいかわらずクオリティは高いものの、印象的なトラックが少なくて地味な作風だなぁと感じました。


しかし、全体をしっかりと聴くと、実はループだからこそ生み出せる、宇宙の奥深くへと潜っていくよう感覚がCDに充満しており、確かな世界観を観ることができます。
ひとつひとつの曲は展開を削ぎ落とされているかわりに、アルバム全体でひとつの「展開」を作りだしています。ラストの声ネタまで一貫して綺麗な流れがある。
コアな曲で体を揺らしたり、ふと現れるウワモノにハッとさせられたりと、聴くごとに発見のあるアルバムです。

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①アナウンス曲「Airport」のリミックス。オシャレなハウスサウンドとともに新たな旅立ちがアナウンスされています。元にあったボコーダーボイスも入ってくる。雰囲気のあるイントロトラックです。


②単音ベースが強烈なテクノで一気にダークな路線へ。エスニックなウワモノがリズムと上手く噛みあって妖しい空気を作り出しています。ドラッギーなトリップ感。


③フィジットなフルーヴも感じる独特のリズムを刻む。次の曲への繋ぎ方がカッコイイ。


④トライバルなテクノ。ひたすら反復でほとんど展開無し。ゆえにノレる。


⑦神秘的なループフレーズと女性の声ネタが印象的な浸れる曲。ダークな曲が続いた分、綺麗さが際立ちます。軽めのキックが曲の空間的な深みを無限大にしています。ここで一度ノンストップが切れて第一幕は終了。


⑧ミニマルなテクノに次第と分散的なブレイクビーツが被さっていく。ビーツの弄り具合がハマります。


⑨帰還のアナウンスメントとともにRazunaさんのメロディアス方面が前に出たテクノが展開。物哀しげな旋律がアインハンダーの四面を思い浮かばせます。後半に一気に動き出すメロディが極上の哀愁を帯びている。どこまでも哀しい曲。


⑩最後に待っているのは、ひたすら反復する声ネタが耳に残るテクノサウンド。この声ネタは癖になる!ラストが繰り返しで終わるってのが良いなぁ。今作で一番好きな曲。MusicMusicDreammusicDreammusicDreammusicMusicMusicDreammusicDreammusicDreammusic……。

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展開の少ないストイックな曲が組み合わさることで「一枚」の大きな展開を作っているテクノ・アルバム。
作風は違うもののやはりONLINERの系列にあるCDでした。


計算されたアルバム全体の構成や、機械的なのに生々しさがあるRazunaさんの色が随所で顔を覗かせたりと聴けば聴くほど味が出てくるスルメ盤です。
一度ハマりだすと抜け出せない中毒性があるのですが、アルバム全体の流れに気付きにくいというのが難点であるかもしれない。


初期は哀愁メロディテクノや中期の攻撃的なリズムなど、色の濃い作品が多い氏の作品の中では、かなり正統派なダンスミュージックの作品かもしれません。