soundwing-あの素晴らしい駄文以下のなにか

関西(大阪)のライブレポートを中心に更新。昔はフリーゲームや同人音楽のレビューをしてました。

2011/02/26 Anla Courtis + 山本精一 + YOSHIMIトリオ、カヒミ・カリィ・バンド @ 梅田Shangri-la

昨日はこれに行ってきました。
アルゼンチンの伝説的実験音楽バンド・Raynolsの音楽的要であるAnla Courtisに山本精一+YOSHIMIを加えたトリオ。さらにカヒミ・カリィ with 大友良英 + ジム・オルーク + 石橋英子 + 山本達久という恐ろしく豪華なメンツ。


前半戦はAnla Courtis。トリオとなっていたけど実際はカヒミさんを除く全員による即興セッション。
一人がステージ裏かふらりと出てきて音を奏で、そして帰っていく。また他の人がやってくる音を出して帰っていく。約二時間、止まること無く生み出される濃厚な音空間でした。

Anla Courtis + 山本精一 + YOSHIMIトリオ

Anla Courtis、山本精一、YOSHIMI

まだ開場前SEが流れているなか、唐突にAnlaが登場。特に誰が拍手するでもなく、のっそりとギターを準備してスタート。
木の枝(?)をバイオリンの弓のようにしてギターをかき鳴らす。幻想的でいてどこか不快な音色。さっそくShangri-Laが奇妙な空気で充満していく。
しだいにノイジーになってきたところで山本精一が登場。スライドバーを使ってイルカの鳴き声のようなギターノイズで高音をブレンド。YOSHIMIもドラムで加わり、しばらくの間お互いの様子を伺うような演奏。


不規則にかき鳴らされていたAnlaのギターが少しづつリズミカルに刻まれはじめると、山本精一がリズムマシーンを手にとって金属音でリズムを強調していく。そして、明確かつシンプルなリズムのダンスビートを挿入。きっちりノッてる山本精一(と言っても軽く頭を上下に振る程度だけど)はあんまりみたことなかったので新鮮な気分。
YOSHIMIは高台に登って変則的なボーカリゼーション。
超音波のような奇声から神々しいコーラスまで様々な声を使い分ける存在感のあるパフォーマンス。
視線はどこか遠くを見ていて、無表情とも笑ってるとも見える顔つきは無垢な少女を連想させるけど同時に狂気も感じる。自分たちが住む世界とは違う世界を感じさせる声はセッション中一番のインパクトでした。
非人間的なパフォーマンスをした直後に、マイクスタンドを下げようとしてもなかなか下がらないで苦戦するのが面白く、可愛らしかったw

YOSHIMI + ジム・オルーク

山本とAnlaは一度退場してYOSHIMIはピアノへ。農業のおっさんがステージを横切ったと思ったら髭ボーボーで太っりまくったジム・オルークでした。
YOSHIMIはピアノでも速弾き螺旋ピアノを奏でて多才っぷりを披露。何ヤラせてもハイレベルかつ常人じゃ理解出来ない世界観を持ってるなぁ。
ジム・オルークはハーモニカをエフェクトに通して笙のような音で鳴らしたり、パルス音でミニマルなリズムを刻んだりと深い空間を作っていく。
途中からやってきた大友良英がギターで少しづつ色を加えていって、ふとした瞬間にグッとブルージーなフレーズへシフト。YOSHIMIも一緒に高まっていく。ジム・オルークは珍しくドラムに座った!……と思ったら軽くタムをなぞるぐらいで帰っていきました。
ここで圧倒的な存在感を放っていたYOSHIMIが歓声に包まれて引っ込む。いやー、YOSHIMIはすごかった。なんといっても空気が普通じゃない。

大友良英 + 石橋英子 + Anla(山本精一)

ピアノには石橋英子が座り、山本精一も再登場。大友はここではベースに持ち帰る。不協和音の危ういセッション。うーむ、ちょい微妙だったかも。山本精一はここで出番が終わりなんですが、この日はあまりパッとしなかったかも。

山本精一と入れ替わりで登場したAnlaと大友で強烈な爆音を披露。このメンツが集まって意外なのが暴力てきな爆音ノイズはココぐらい。大友は座ったまま身体を大きく動かしてギターを掻きむしり、Anlaは棒みたいなエフェクタ(?)を手に持って大きいアクションで振り回す。途中で電動ドリルでエフェクタを震わしたりと面白いことをやってた。
石橋英子がドラムへ向かいトライバルなビート刻みはじめる。呼応するように全体も温まってくる。ここの躍動感は素晴らしかった。

大友良英 + Anla Courtis + 山本達久

石橋英子が山本達久と入れ替わり。リズムマシーンでも使ってたかと思うように一つのドラムセットでスムーズに移行するのは驚かさました。そのままトライバルなリズムをキープして次第に暴走していくドラム。ものすごい手数の多いドラミング!ここが一番ボルテージが高かった。すごかったー!

Anla Courtis + 山本達久 + ジム・オルーク

一度静かになってからシンプルなロックリズムがスタート。このビートがまたかっこ良かった。リズムが少しづつ変則的になってきてジム・オルーク登場。Anlaのノイズとじっくりしたシンセが重なる。

Anla Courtis + ジム・オルーク

早々と山本達久が退場。演奏時間は短いもののセッション全体のピークをぶんどっていきました。


残るはAnlaとジム・オルークの外国人二人。世界で活躍する伝説の二人。ジムはギターを手にとって少し悩んだすえドラムへ。
ジム・オルークが叩くはリズムは、一定のフレーズがあるんだろうけど全然掴めない変則的なモノ。あとに山本達久がMCで「ジムさん、ドラム叩いて燃え尽きるき満々だったじゃないですか」と言ってたけど、スネアとハイハットを感情込めて同時に叩くその表情は真剣そのもの。ジム・オルーク on ドラムとかレアなモノ見れた。
Anlaはギターを高くに掲げてノイズを発する。長身だから天井にギターが付きそうになってすごい迫力。10分ぐらい(?)ひたすらギターを上に突き上げ続けるとはすげーパフォーマンスだ。


いつ壊れるのかわからない緊張感がふと静まりセッション終了。ずっと張り詰めた表情をしていた二人がにこやかな顔で握手を交わしたのが印象的でした


濃密な1時間強のセッションは才能のぶつかり合いという高度な遊びで。
ピアノを中心とした中盤など少々眠くなる部分もあったけど、幾度も夢の中にいるような感覚に陥ったり、要所要所の盛り上がりはすごかった。



カヒミ・カリィ大友良英 + ジム・オルーク + 石橋英子 + 山本達久)

前半と打って変わって整然とした落ち着いたステージング。最強バンドを携えながら堂々と歌うカヒミさんは動きがゆるやかでオーラがありました。
ここでも山本達久のドラムはスゴかった。この人は初めて見たけど粒の細かいドラムに一発で虜になりました。


大人な音楽に半して、MCがゆるいりゅい。カヒミ「2年ぶりにお酒を飲みました」ジム「オメデトウゴザイマス」で拍手が起こったり。アンコールで急遽決まった曲を前に大友が「誰かキー知りませんか?」ジム「E」大友「ほんとに?」ジム「……たぶん」とか笑いどころがいっぱいあった。カヒミさんの「皆さん、ゆるすぎませんか?大丈夫ですか?」ってのはあなたがそれを言うか、と。


曲はサンバなリズムの曲が良かった。
最後二曲は大友の本領発揮。エグいギターソロに痺れる。MC中はアホなことばっか言ってて緩んだ顔をしてるのに、演奏になると真剣な顔でスゴい音を出してる。カッコイイ。



事前にとある場所で今回のライブを「奇才達の集い」と称して話してたんだけど、まさにソレだった。
普通じゃない空気でいっぱい。
ただ、このメンツが起こったら「もっとスゴイことが起こるんじゃないか?」と期待してたところもあります。十分満足できてはいるけどこの夢のメンバーだと120%を期待してしまう。今回は90%ぐらいかな。