soundwing-あの素晴らしい駄文以下のなにか

関西(大阪)のライブレポートを中心に更新。昔はフリーゲームや同人音楽のレビューをしてました。

【代理公開】このM3-2011春CDがスゴイ! by アオキ (オタクとメタルと私、DOUJIN METAL)

同人メタルのディスクレビューを中心とした同人誌「DOUJIN METAL」のを頒布されているサークル・オタクとメタルと私さんから『このM3-2011春CDがスゴイ!』の3枚が届きました。
オタクとメタルと私はトラックバックに対応していないとのことなので、ここで代理公開します。


さすが音楽について書くことに慣れている。ずっしりした書きっぷりです。
ご参加ありがとうございましたっ!

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このM3-2011春CDがすごい!

  • Sparespine「燃えるからだとひきかえに」

 製作段階からかなり待たされた感はあるものの、ついに完成した1stアルバム。製作期間は1年3ヶ月とのことだったが、ここ1年のイベントで「また延期か・・・」という思いをしてきた私にとっては、待った甲斐のあるアルバムだ。
 基本は往年のジャパメタに欧風の要素をミックスした路線で、耳に馴染みやすい歌メロと重量感のバランスが良く取れている。また、どの曲も長めになっていることも特徴で、これはどの曲にもリード・ギターがふんだんに盛り込まれているからだと思われる。なおこのギターは、誠に失礼ながら決して超絶技巧を誇っているわけではないのだが、丁寧にメロディを奏でるタイプであるため、曲の中で非常に印象的になっている。このギターとuco(ヒメゴト。)のシャープなヴォーカルが、アルバムを駆動させる両輪といえるだろう。
 また、タイトルトラックの⑨と続く⑩はとりわけ長い曲だが、ここではギターだけでなく曲構成そのものが壮大で、こうしたドラマティックな方向性にも、引き出しの多さを感じさせる。
 気になったのは、ドラムがもう少しシャープでもよかったかと思う程度で、他に欠点らしい欠点は見当たらない。

 2009年の「Allegoria」以来約1年半振りの新作。前作は童話をモチーフにしていたことで、寓話的なリリカルさが作品を支配していたが、本作ではそれは一変している。前作で童話のイメージが徹底されていたのに対し、本作で貫徹されているのは愛する者と会うことのできない悲哀である。これは全曲の歌詞で貫かれていて、ある意味コンセプトアルバムとさえいえるだろう。
 音のほうもまた変わっている。前作がどこかこじんまりした音だったのに対し、本作のプロダクションはかなり広がりを感じさせるものになっている。それは、一歩間違えば散漫なイメージしか残せない“雰囲気もの”に陥ってしまうものなのだが、ところどころでエッヂの効いたギターや体温の低いヴォーカルによって、浮ついた感触はない。まるで、しっかりと地に足をつけながら、意識だけは広大な宇宙に向かっているようなサウンドだ。
 こう書くと、ひたすら壮大な作品で取っ付き辛いように感じられるかもしれないが、決してそんなことはない。全体を通じてフックに富んでいる上、曲単位でも充分個性的だ。

 プレスCDとしては2作目。1作目はジャケットと内容のギャップに驚かされたものだったが、本作でも大いに驚かされた。ただ前作とは異なり、驚かされたのは内容の充実という面での話である。正直なところ、ある程度はレベルアップするだろうとは考えていたが、まさかこれほど没頭することになるとは思わなかった。
 まず①からして凄い。イントロ的な曲かと思わせながら、しっかり紆余曲折のある曲に仕上がっている。聴き始めこそ「5曲入りなのにイントロはいらないだろう」と考えてしまったのだが、終わってみればその無礼をお詫びしたい気持ちでいっぱいになるほど、素晴らしい曲だった。
 続く、昨年先行してCD-Rで頒布されていた②は、言うまでもなくさらに高い完成度の曲に仕上がっている。元々痒いところに手が届くような曲だったが、その的確さに磨きがかかっている。
 その後もアコーディオンを中心にアコースティックに疾走する④やヴィジュアル系のような性急なビートが印象的な⑤が続き、5曲とは思えない充実度である。これがもしフルアルバムだったらどうなるのだろうと思わずにはいられない。