soundwing-あの素晴らしい駄文以下のなにか

関西(大阪)のライブレポートを中心に更新。昔はフリーゲームや同人音楽のレビューをしてました。

2011/12/01 山本精一 CROWN OF FUZZY GROOVE 再現LIVE @ 梅田シャングリラ

名盤「CROWN OF FUZZY GROOVE」”9年越し”のレコ発。


意気揚々とした気分でシャングリラに着くと、開場が遅れて外で30分ほど待機。
「屋内入ったら暖かいだろう」と見越してYシャツだけだったから寒かった……。
中に入ると先日のラプソディアのレコ発と同じく座席スタイルでした。


メンバーは実質PARAマイナスYoshitake EXPEさん。
山本さんの「Yoshitakeも連れてきたらよかったと後になって気付きました」と気の抜けたMCから幕開けするも、ひとたび演奏が始まると緊張の糸がピンとステージ上に張られる。0.1m以下の太さの糸を4人で色付けて織り合わせていくかのような繊細な音楽。


スタートは水の入ったグラスの縁をなぞる音(グラスハープ)。頭から「こんな音使ってたんだ!」と驚かされた。
山本さんは全体の1/4ぐらいしかギターを使ってませんでした。
大きくても50cmに満たない、まさしく”小物”を次から次へと操ってサウンドテクスチャーを彩っていく。
小物の例を挙げると、グラスハープ、ミニコンガ、ミニビリンバウ、シェイカー、ラジオ、よくわからない打楽器、鉛筆とノート、はてにはドキンちゃん人形まで飛び出す。
小さいシンセ(サンプラー?)をいじりながら小物を合間に入れてました。楽器じゃないものも含め、どれもが素晴らしい音をだす楽器になる。山本さんが繰り出す一音一音に耳を奪われました。


特にワイングラスが大活躍。冒頭のグラスハープに加え、ストローで水をブクブクしたり、ハサミでかき回したり……。そんなどうってことなさそうな音がマイクで拾うと澄んだ川の調べかと錯覚する美しい音として耳に届く。


この日の千住さんは、ラプソディアレコ発での自己主張する若手らしいドラムではなく、とにかく裏方に徹っしていました。
それが原因なのか押し付けるリズム感はほとんど感じませんでした。CDだとカッチリ四つ打ちしてる『Terminal Mind』すらもビート感は弱め。とにかく心地よい音が漂う、そんな音の出し方。


山本さんから次々と飛び出す音がおもしろい。
静かに音を紡いでいた前半から、ちょっと跳ねるリズム、ギターのフィードバック(『Whity』)、メロディアスなアコギ(『Missing Ring』)とライブが進むにつれ少しづつ音の構成が可視化してくる。


そしてアルバムと同じく最後に演奏された名曲『Mantral』が演奏されている間は夢のようなの一時でした。真ん中の”ヒラける”部分で目の前の景色がサイケ色にブワッと広がったように感じました。あまりに気持よすぎる感覚におもわず「うわぁあ」と声が漏れた。
山本さんはマイクをどかしてギターに集中。幸福感に溢れるフレーズで全体を引っ張る。キーボードが音をどれだけ重ねようとメインに聴こえてくるのはギター。なんて力強い旋律なんだろう。
またここで千住さんが大活躍。盛り上がりがピークに達した時、頭のタム2つにアクセントを入れる。たったこれだけで一気に上昇感がアップ。あのタムの音は気持ちよかった〜。フレーズは同じでも叩き方でこんなに変わるもんなんだなぁ。


終演後、客席からの拍手も心からの敬意がこもっていた気がします。
アンコールの手拍子は起こったけどそのまま終幕。でも不満だった客はいないと思います。アンコールの拍手はしながらも心では「(客もバンドも)これほど素晴らしい再現ライブのあとにアンコールなんて無理だ」と思っていたに違いありません。


前半の音の面白さ、そして『Mantral』の開放感にぶっ飛ばされました。別次元の扉が見えた気がします。テクノロジーが進化してもシンセに頼らず、色々な楽器を使って紡ぐ山本さんの音楽。だからこそ面白い。